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第20話「絆の美しさとその有用性」

ベヒモスの前にたどり着いた俺たち二人は詠唱の準備を始める。

今回使う魔法はヴァルドが護身用にと教えてくれた奥義の魔法にあたる。


ただ、この魔法は使用者が2人以上いなければ発動できない。

「まさか、使うことになるなんてな・・・。」


アイリスが両手の掌を開いて、前に突き出す。

右にいる俺も続けて同じ姿勢をとる。

そして、詠唱をまさにその瞬間だった。


ベヒモスが先手を仕掛けにきていた。

その巨体が持つ大きな尾が振り回され、勢いづいた後にこちらに向かってきていた。


今からでは避けきれない。

・・・どうする?

受け止められそうな魔法もない。


その時だった。

ベヒモスの尾へ向かって、一つの影が凄まじい速さで飛び込む。

──ルカだ。


ルカはそのまま減速することなく進み続け、尾と衝突した。


・・・ドゴォォォォン‼


ルカが先程よりも速い速度で弾かれて戻ってくる。

ただ、途中で姿勢を取り戻し、地面との接地面を徐々に増やすことで、摩擦によって速度を殺した。


そして、ルカのおかげもあり、ベヒモスの尾も弾かれ、時間に猶予が生まれた。

非常にありがたい。


アイリスと目が合う。

互いに小さく頷き、俺たちは詠唱を始めた。


俺とアイリスを中心に円形の魔法陣が形成されていく。

二つの魔法陣は徐々に大きくなっていく。

俺が唱える。

「交わる双環、理を超えて境界を繋げ。」

俺の魔法陣が赤く変色して、光り始める。


アイリスが唱える。

「眠りし契約よ、我らが共鳴に応え顕現せよ。」

アイリスの魔法陣が青白く変色して、光り始める。


大きくなり続ける二つの魔法陣はやがて「重なり」が生じる。


ベヒモスが雄叫びを上げる。

・・・時間がない。


アイリスの方をちらりと見ると、こちらを見ていた。

俺は頷き、合図を送った。

──1ヶ月前。

ヴァルドが説明をする。

「これは、二人以上の術者が展開した魔法陣を重ね合わせ、重なった領域(共鳴領域)を新たな魔法陣として再構築する究極の融合術式だ。

通常の魔法では、それぞれの魔法陣が独立して魔法を発動する。

だが、この魔法では、重なった領域そのものが第三の魔法陣へと変質する。

その領域は世界と異界の境界を一時的に曖昧にし、術者たちの魔力や意志を媒体として、本来この世界には存在しない存在や現象を具現化する。

ただ、召喚される存在は固定ではない。

そこだけは気をつけろよ。」



そして、唱えた。



「「 円環術式──《双環収束コンバージェンス》 」」



二つの円環が重なった瞬間、共鳴領域が眩い白銀の光を放つ。

赤と蒼の魔力が互いに絡み合い、巨大な螺旋を描いて一点へ収束する。

空間が軋む。


ピシッ――。


世界そのものに亀裂が走った。その裂け目から現れたのは、漆黒の鱗に紅蓮と氷晶の紋様を宿す巨大な竜。

黄金と蒼氷、二色の瞳がゆっくりと開かれ、世界を震わせる咆哮が闘技場に響き渡る。


今回、召喚されたのは・・・なんだこれ?


俺には分からなかった。

アイリスが息を呑む。

「……嘘。」

震える声で呟いた。

「神話級の竜……「霜炎竜フロストレイム」よ。」

ベヒモスが初めて後ずさる。

その黄金色の瞳には、明らかな警戒の色が宿っていた。

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