第17話「人間は立ち直った後が一番強い。」
罪悪感とかこれまでの努力を全て無駄にしたとかいろんな感情が一気に押し寄せてくる。
何がしたいとかがない。
完全な無気力。
吐き気がする。
なんなんだ、この状態。
どうしたらいい。
俺はどうしたらいいか教えてくれよ・・・。
誰かっ‼
頼むから・・・教えてくれよ・・・。
いつから眠っていたのだろうか。
コンコンコン。
部屋の戸が叩かれる。
「どうぞ。」
今日、声を出すのはこれが最初だった。
ゆっくりと扉が開いていく。
そこにいたのはアイリスだった。
いつもは平然としている顔が、様々な感情が入り乱れているかのような顔で驚いた。
怒り、悲しみ、心配、不安・・・。とにかくたくさんの感情がそこにあることが分かった。
そんなことを感じていた直後、アイリスが膝から崩れ落ちた。
そして、すぐに泣き始めてしまった。
え?
ど、どうしたらいいんだ?
「な、泣かないでよアイリス。どうしたの?」
返ってくるのは泣き声だけで、返答が全く聞こえない。
とりあえず、ベッドに座らせる。
アイリスが少しずつ落ち着きを取り戻し、説明を始めた。
昨日、俺がアイリスの話を遮って帰ってしまったことで怒らせてしまった思いと罪悪感を抱いていたこと。
今日、俺が欠席したことで欠席の原因は自分にあると責任を感じてしまったこと。
また、初日の得点配分が大きい分その責任も大きいと感じていたこと。
俺は、前世で何もかもを犠牲にして努力に勤しんでいた。
だから、仲間に心配をされることがなかった。
そして、今日始めて心配をされたことに嬉しさを感じた。
でも、俺の思い、合格を諦めることに変わりはなかった。
もう合格することはできない。
既に3分の1の点数を捨ててしまっている。
すると、まだ目が赤いアイリスが昨日の話の続きを始めた。
「私は合格できる自信がないのよ。
才能は人よりもあるかもしれない。けど、私より才能がある人はこの世にたくさんいる。
だから、今までめげずに努力を積み重ねてきた。
でも才能の差は努力では埋まらないことに気づいたの。
そんな時、あなたに会ったの。初めはサボってばっかりで、本当に合格する気があるのか分からなかった。
でも、セラフィア山脈で上級魔法の訓練をしていた時からあなたは狂ったように努力を始めたわ。
私は常に、人間ができる限界の努力量をしていたと思っていた。
でも、違った。違うことにあなたに気づかされたの。
自分の無力さを認め、受け入れ、改善しようとする意思を持って行動していた。
そんなあなたのようになりたくて、私もこれまで以上に頑張るようになったの。
2回目の模擬戦で実力が拮抗していてもなお、私が勝てたのはあなたのおかげなのよ。」
気づいたら、泣いていた。
「いい?本当に強い人は才能がある人じゃない。
自分で反省することができて、挑み続けることができる人よ。
才能の差が努力では埋まらないことが、仮に事実だったとしてもそれは努力をしない理由にはならないって教えてくれたのはあなたなの。」
5歳に泣かせられるなんて、コイツも実は転生者だったりするのか?
まあ、そんなことはどうでもいい。
一度失った自分の芯をおかげ様で取り返すことができた。
ありがとう、アイリス。
「俺、頑張るよ。」
今までが嘘だったかのようにアイリスの顔が明るくなっていく。
ただ、現実は気持ちだけでは変えられない。
200点の差をここから何とかして覆さなければならない。
でも、今の俺にはそんなことは些細な問題に過ぎなかった。
なぜなら、人間は立ち直った後が一番強いから。
そして、入試一日目が幕を閉じたのだった。
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