第16話「うるせぇよ。」
目が覚めると、家のベッドの上だった。
両親の話によると、ヴァルドが家まで運んできてくれたらしい。
貴重な膝枕チャンスを逃してしまった・・・。
正直、勝てると思っていた。
ほとんどズルのような魔力シューターまでわざわざ買って、挑んだのに。
やっぱり、努力だけではエリート、いや、才能には勝てないのかもしれない。
それでもやると決めてここまで頑張ってきたのだから、最後まで走り切りたい。
でも、どうしてもアイリスやルカのことを考えるだけで本当に俺なんかが合格できるのかと不安になってしまう。
このどうしようもない不安と焦りと緊張は誰にも聞こえない涙として布団の中で流れていった。
入試の前日。最後の稽古を終えた俺たちにヴァルドが話し始める。
「二人とも今までよく頑張ったな。
いろいろなことが半年であったが、それを乗り越えて今ここにいるのは紛れもない事実だ。
胸を張れ。」
アイリスの顔を盗み見ると、その澄んだ蒼色の瞳には、自信と期待に満ち溢れていた。
ヴァルドは話し続ける。
「明日が本番だが、俺からの稽古を全て終わらせた二人なら絶対に合格できる。頑張れよ。」
自信の無さを全開にしていた俺に励ましの言葉をヴァルドがかけてくれるわけでもなく、最終日の訓練は終了した。
入試は3日間に分けて行われる。
1日目は基礎運動能力試験と魔法試験
2日目は筆記試験
3日目は実戦試験となっている。
実技試験はそれぞれ100点満点。
筆記試験は前世の世界で言うところの数学と理科(生物、化学、物理、地学)全般の2教科で構成されている。こちらは、それぞれ150点満点。
よって、全教科合計600点。
つまり、1日目と2日目が200点まで稼げることになるため初日のスタートダッシュが肝心だ。
最後の訓練が終わったあと、アイリスに話しかけられた。
「私、正直自信がないのよ。」
は?
うるせぇよ。
俺よりできる人間が「自信がない」?
さっきまで自信に満ち溢れた目をしてたじゃないか。
本人にとっては何気ない一言なんだろうな・・・。
俺はアイリスの話の続きを聞かずに走って帰った。
母が作ってくれた夕飯も食わずして寝た。
次の日、試験開始の2時間前に起きた。
だが、昨日のことを思い出す度に胸が苦しくなる。
そして、俺は初日の試験を欠席した。
少しでも面白いと思ったらブックマークや下の評価★★★★★をお願いします!




