ヴィヴィと飲みながら
俺は翌日の昼、カウンターにイーグルアイのコーチ、ヴィヴィを呼び出した。中年のブラジル人で、俺とそう歳の変わらないように見えるおっさんだが、サッカーは滅法上手い。
この街に30年ほど前からいる、サッカーコーチだ。
「なあ、ヴィヴィ。チームを勝たせることができるのはカツユキか?神宮寺か?」
「それはやってみなきゃ分からナイ」
ヴィヴィはアルコールを飲まない。ウーロン茶をビールみたいに美味そうに飲む。
「じゃあ、シュートが強烈なのは?」
「カツユキ」
「点が取れるのは?」
「同じかナ。カツユキもカオルもいい選手」
「……じゃあ、体格を活かしてボールをキープできるのは……」
「クマちゃん、自分が欲しい答えをリードするのはよくナイ」
「だってよぉ」
俺は日本酒を飲みながらクダを撒いた。この日本酒はアルコールの度数が比較的低い。俺本人は酒に弱くて、そのことを決まりが悪いから隠していた。
嫁がサポーターの後輩数人に話した時はかなり怒ったが、後輩の反応は微々たるものだった。だから?という感じで拍子抜けした。
「FWってのは一番前のポジションだろ?そこに点取り屋がいなくてどうするよ」
「クマちゃん、何が一番大切かなんて人それぞれ。押し付けちゃダメ」
頭に克也の顔が浮かんで、俺は日本酒を注ぎ足した。でも大して飲めないから舐めるようにチビチビとやり過ごす。
「じゃあよ、ヴィヴィが思う一番大切なことって何だ?勝つことか?楽しむことか?」
「今を大切にすることかナ」
言い返すこともできずに下を向く俺の背中をヴィヴィが叩いた。
「クマちゃん、足跡を追いかけても明日は見つからナイ、今を一歩、一歩」
面白くない気持ちを抱えて店の用意をしようとすると、暖簾をくぐるヴィヴィの後ろ姿から声がした。
「クマちゃん、今度ボール一緒に蹴ろうネ」




