色合いがきれい
アクセス、ブクマ数も増えてすごく嬉しいです!
ぜひリアクションをお願いします!
ここは、変態王子ことギル兄の城の部屋のひとつ。
あの後、半ば強制的に連れてこられたわたしたちは、突然始まったルームツアーに、みんな揃って開いた口が塞がらないでいた。
なぜなら部屋のリビング、寝室、パウダールーム、浴室、レストルーム、すべてが広すぎるからだ。
浴室だけで30平米、前世で一人暮らしをしていた1LDKのサイズである。
ちなみに我が家は、この馬鹿げた浴室の3倍かな。
遠い目をしていたら、ギル兄がこれでも質素なゲストルームだよ、とほざいてきた。
質素とは…。
そんなこんなで、リビングに戻ってきたのだけど、ギラギラと無駄に眩しいシャンデリアはさておき、壁に飾られたド下手な絵が、この豪華絢爛な空間をぶち壊している。
価値のあるものなのかな。全く魅力を感じないけど。
みんなを見遣ると、触らぬ神に祟りなしと、誰も目も向けない。
脳筋のジン兄でさえ、そわそわと目線を泳がせているだけで、口を開かない。
成長したなぁ、と感心していたら、後ろを歩くベル姉がジン兄の服の裾を掴んで、時折引っ張っている。
ほうほう、そっちの気が気でないんだね。良い傾向だ。
邪魔なんてしないよ、続けなされ、とニヤニヤしながらひとりうんうんと頷く。
「ミアは、その絵が好きかい?」
げっ!わたしとしたことが見過ぎてた!
ギル兄は変態とはいえ王子だ。
絶対に答えを間違えてはいけないと、ビシビシと後ろから圧を感じる。
院長、圧するより正解を教えてよー。王族に質問されたときは確か…
わたしは、震える唇をなんとか動かす。
「い、い、色合い、が、き、き、きれい」
「そっか、色合いがきれいか!嬉しいなぁ!」
わたしは急発進で振り返り、院長の脚に両の腕を絡ませて、小声で言った。
(間違えなかったよ!褒めて褒めて!)
(よくできましたね!)
院長がわたしの頭をなでるので、によによと顔が緩む。
院長に処世術を習っておいて良かった!
こうゆうときは、好きとも嫌いともはっきり答えないが正解で、間違えた場合、不敬になるんだって。
おっと、なんだか後ろから、冷たい空気が。
なんなのよ、まったくめんどくさいな、この王子は。
わたしは院長の後ろに回り、顔だけを覗かせて、最大の営業スマイルを放った。
「お上手な、絵ですね」
困ったときは笑顔そして褒めろ、これも処世術だ。
わたしの中では過去1棒読みだったはずが、なぜかギル兄が照れている。
はて?
わたしの頭上に疑問符が浮かんでいるのに気づいたギル兄が、この絵について教えてくれた。
曰く、先日夢で見た綺麗な勿忘草のお花畑を描いたという。
え?ギル兄、絵描くの下手すぎない?
だいたいこのどこがお花なの?白とピンクと水色の点々しかないんだけど?
ツッコミ所が満載だけど、我慢我慢。
わたしは引き攣る筋肉を無理矢理起こし、ステキね、とだけ答えたのだった。
ギルは褒めら慣れていますが、好きな人に褒められて、悦びを隠せないでいます。
「面白かった!」「続きが気になる!」「続き早く!」「タイトル回収まだ?」「ミアちゃんかわいいー!」などなど、思って頂けましたら、リアクションをいただけると幸いです。
今後、作品を作っていく上での糧になります!
どうぞよろしくお願いします!