お肉のおくち
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「おにく…たべてみたい…」
「……、ロッテは…食べたこと…なかったね…」
今にも消え入りそうな声の兄妹の会話に全員がハッとした。
みんな知っている。
スタンピード直後に両親を亡くし、親戚中をたらい回しになったことを。
テオ兄が幼いロッテを背負って、王都まで必死に避難したことを。
頼れる人も心配してくれる人もおらず、壊れかけの家屋の角に隠れて、配給された少ない食事を分けてなんとか生き延びたことを。
辛かっただろう。
苦しかっただろう。
震えるのはこの身体がその惨劇を経験しているからだ。
なんでもっと早くに転生しなかったんだろう。
あと2年早ければ…。
スタンピードのばかやろう…。
「……、っ…」
わたしの頭をなでるテオ兄の手が切なくて、涙が止まらない。
ー誰だ泣かせたやつは。俺様がこらしめてやる。だから泣き止め。
ークロと仇とってくるから泣かないで〜。美少女精霊ビーちゃんに任せて!
うん?今なんて?
泣き止むからちょっと待って。
国王をこらしめないで。
わたし死んでないから。仇とかないから。
二人が向かったら確実に死ぬ。
チリにすら残らなさそうだから、やめたげて。
わたしは、袖で目をふき、戦闘体制に入っている二匹を両手で抱えた。
*
わたしの魔法では、生物は生成できない。
これは女神様との誓約だ。
切り身ならいけるのでは?と試しにやってみたが、発動しなかった。
お肉を買い続けるにはもっともっとお金がいる。
野菜だけじゃダメだ。すぐ育ってすぐ売れて日持ちするものでーー。
「俺はでっかい肉が食べたい!」
「私は柔らかくてトロけるお肉がいいわ〜」
「もしかして、ほっぺが落ちるやつ?!」
「え、ほっぺ、おちちゃう?!」
「落ちるくらい美味しいって意味だよ。僕も食べたいな〜」
「…食べて…みたい…」
真面目に金策を考えていたのはわたしだけだったらしい。
さすがのわたしでも黙ってはいられない。
「みんな、ここになおれ」
わたしは今、両手を腰に当て、正座する五人を上から睨んでいる。
隣では、ロッテがわたしをじっと見るなり、見よう見まねで同じ姿勢をとる。
まだ5才の幼女に金策を求めるほど、わたしは鬼畜ではない。
わからなくて当然だから、彼女には正座などさせない。
今はとにかく急いでいるのだ。
「おにくの、にゅうしゅほうを、おもいついたもの、てをあげよ」
「はい!」
言い終わるのが早いか、ジン兄が垂直に手を挙げた。
意外だ。この脳筋にそんな知識があったなんて。
わたしは、ジン兄を指刺して言った。
「はつげんをゆるす」
「王都で食べた屋台の串肉がいい、、です!」
おいおいおーい!なんで今言った?
あれはみんなには秘密だって言ったじゃん?
その前に、それ金策じゃないからね!
「え!?あの肉はたしかウーシーで、ミルクもおいしーー」
「?!まさか、盗んだんじゃ?」
テオ兄の言葉を遮り、アクア姉が疑惑の目を向けてくる。
わたしは口を紡ぐ。開けば墓穴を掘りそうだからだ。
「違うわよ、依頼主にごちそうになったのよ」
「羨ましいだろ〜!俺だけじゃない、ベルとミアとクロも食べたぞー」
「「「ずるい!!」」」
おい、ジン兄、さっきから一言、いや二言余計だ。
留守番組だった子からの視線が痛い。
仕方ないじゃん。
あの肉は、鮮度が命って言われたんだもの。
だから、持って帰れなかったの!
ーあの肉は美味かったなぁ。柔らかくてジューシーで。なぁ、ミア!
ーずるいずるい!ビーも食べたかった!ずるい!
こっちもずるいコールが始まった。
君たち、今はおしゃべりをしてる時間などないのだよ。
わたしは、すでにお肉のおくち。
今日お肉を食べるんだから。
わたしは腕を組み、声を張った。
「しずかに!きょうは、みんなで、おにくをたべるひ!うーしーをかいに、おうとにいきましゅよ!」
一瞬にして静まり返った。
まったく、都合の良い子たちだ。
ミアが盛大に噛んだこと、だれも気にしていません。
みんなお肉に夢中です。
「面白かった!」「続きが気になる!」「続き早く!」「タイトル回収まだ?」「ミアちゃんかわいいー!」などなど、思って頂けましたら、
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