蓋をした記憶〜ジンSIDE〜
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商店街エリアに入ると、途端にギル様の目が爛々と輝いた。
例えるなら、さっきまでは捕らわれた魚の眼。
今は、興奮を露わにする小動物の眼だ。
制止するアルト様をよそに、ギル様はキラキラした眼で右に左にと忙しくキョロキョロする。
さすがに地面にへばりついてヤダヤダとごねてはいないが、ギル様は9才。まだ子どもだ。
『子どもは子どもらしくが一番』
俺が好きな言葉で、よくチビ達に言う。
もちろん院長の受売りだ。
2年前だったか。
あの時はガキだったな〜。
ジンは、記憶を探るように目を細めた。
♢
アカシャ村の大人達は、疲弊していた。
突然起きたスタンピードで、倒しても倒しても湧いて出てくる魔物達。
体力も魔力も限界だった。
「王都からの救援はまだか!」
「要請を送ったが、まだ…。」
「このままではいつか負ける!ジリ貧だ!」
「王都に避難所があると聞いた。そこに逃げよう!」
「王都のほうが被害が大きいのでは?」
「国王の命令で、騎士団や冒険者が守っているらしい。」
「行こう!もっと魔物が増えないうちに!」
道中は大丈夫だろう。
王都までは徒歩で1時間あまりだ。
騎士団か冒険者が警備してくれている。
誰もがそう信じていた。
しかし、10分も歩かないうちに魔物に囲まれ、それが思い違いだったことを知る。
もう引き返せない。進むしかなかった。
「俺らが道を開ける!走れ!」
「先に行け!」
「前だけを向いて走って!」
「先に行って!」
そう言って減っていく村の大人達。
赤子を抱いた女性や妊婦も分かっていた。
これから魔物の餌食となることを。
肉壁となることを。
無事に王都に辿り着いたのは、12才になる少年と少女の二人だけだった。
避難所はどこも人でごった返していて、二人は身を寄せ合って、夜を過ごした。
明くる日、二人は救護所へ行った。
「俺の村では、困ったときはみんなで助け合ってたんだ。」
「私たちに手伝えることはありませんか?」
みんな、追いついてくるはず。
忙しくしていれば、寂しさなんて紛れる。
待とう。みんなを。
二人は励まし合い、朝から夜まで忙しく動き、体力が尽きて眠る。
そんな生活をし始めて、何日か過ぎた頃、国王からスタンピードは収まった、国葬後は故郷に帰るもよし、王都に残るもよしとの知らせが入った。
「ベル、もう危険はないって!帰ろう!俺は村がいい!みんなのいる村がいい!」
ベルと呼ばれた少女は深く頷いて、二人ですべての避難所と救護所を探し回った。
「アカシャ村の人いますかー?」
「見かけた方でもいいです!いませんかー!?」
村一番の弓名人の父ちゃんが、村一番の火魔法使いの母ちゃんが、魔物相手になんか負けるわけない。
それに俺、ヤーマンさんとステラさんに言った。
ベルのことは任せて!先に行って待ってる!って。
父さんも母さんも、みんなも、追いつくからって言ったもの!
誰も来てないなんて、嘘よね?嘘だと言って…。
お願いよ…!
しかし、二人の願いは叶わなかった。
なんで、どうして、イヤだと泣きじゃくる少女。
俺がついているから、俺がお前を守るから、と少女を抱きしめる少年。
二人は、この日から院長に拾われるまでの記憶に蓋をした。
もう二度と開かないように。
1話の文字数少ないですよね。でも長いと読むのしんどくなっちゃうんです。
短いー!もう読んじゃった!次を早く!っていうくらいがちょうどいいと思うんです。はい。
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