指名依頼と出会い〜ジンSIDE〜
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今日は何回目かの野菜の納品日。
リアカーをかっ飛ばすのも随分と慣れて、腕と脚に筋肉がついてきた。
ムキムキになった二の腕をベルにアピールしたら、ふーんとしか返ってこず。
おかしいな、ミアはホソマッチョーって喜んでたのにな。ホソマッチョの意味はわからないけど。
いつものように食堂の裏口からカンナさんを呼ぶと、急いでギルドの受付に行って!という。
受付?しかも俺だけ。なんで?
理由はわからないが、それよりもギルマスに会いたくない。
教えてもらったアピール法は、何一つ実践できてないからだ。
最大の原因は、ベルとなかなか2人っきりになれないこと。チビ達がいる前じゃ小っ恥ずかしい。
成人の儀までは、あと1年もない。
最近、なんだか院長の視線が痛いような気もするし…。
はぁ…。
俺は盛大に溜め息をはいて、ひとりギルドに向かった。
「え?!俺に指名依頼っすか!?」
受付のお姉さん曰く、一見さんが俺に指名依頼という。
指名というより、ギルドがぜひジンをと薦めたからなのだが、ジンとってそれは指名に変わりなかった。
「銀貨2枚!?」
俺は、依頼の報酬にさらに目をひん剥いた。
ただの街案内に銀貨2枚の報酬。ギルドの手数料銅貨2枚ひいても、標準の倍だ。
依頼主は、世間知らずの貴族の坊っちゃんか。
お気楽でいいよなぁ。
ジンは所謂脳筋で、勉強が大の苦手である。
だから一生出会わない王族の名前など1人も記憶していない。
これが、人生を左右する出会いになるとは、予想だにしていなかった。
♢
俺は重い足取りで、ギルマスの待つ部屋に入り、何度目かって言うくらいの念押しされている。
ベルとのほにゃららのことじゃない。
今回の依頼主に対して、失礼のないように!挨拶しっかり!笑顔で愛想よく!だとさ。
とりあえず、りょーかいと返事したけど、そもそも俺、貴族を相手にしたことないんだけど。
何かあったら責任取ってくれよ?何がなんでも庇ってくれよ?ギルマス?
コンコンッ。
ドアがノックされ、入ってきた少年2人。
うち美少年の方が、足先から頭までマジマジと俺を見る。
値踏みされてるなぁ。
孤児を見る貴族は、皆こうなのか?正直いい気分はしないな。
リピートはないだろうし、これっきりだ。耐えろ、俺。
なんだっけ?あ、愛想よくだ!
俺はニッと歯を出して笑い、手を差し出した。
「ご指名あざっーー」
パァンッ!
言い終わる前に、ギルマスから頭を叩かれた。
いってぇな!死んだ親父にしか殴られたことないのに!!
俺は、痛む頭を摩る。
「申し訳ありません!お赦しください!」
ギルマスがそう言って、依頼主に直角に頭を垂れる。
「…?」
今日のギルマスなんか変じゃね?もしかしてなんか弱み握られてんの?
やっぱり断ろうか、なんて模索していたら、美少年の口が開いた。
「名前はギル。一応貴族だ。隣は護衛のアルト。楽にして。堅苦しいのは嫌いだからーー」
「し、しかし!」
「ギルマス、僕は今ジンと話しているんだ。」
言い終わると同時に空気が変わった。
おいおいおいー!なんか息苦しいんだけど!
威圧オーラってやつ?物騒なもん放つなよ!
今のどこに怒るとこあったか?チビるかと思ったわ!
ギルマスがまた平謝りしてる中、2人は部屋を出ていく。
よし、今だ。
みんなの目線が俺にないことを確認して、俺はズボンの上からサッと触った。
やべ。
少し…
ほんの少し…
チビってたわ。
乾け〜乾け〜と念じながら、俺は歩幅を小さくして2人の後を追ったのだった。
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