末恐ろしい子
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「こしょこしょの、おはなしを、するの!」
突然、裾を引っ張る幼児に誘われ、輪になって、その話を聞く。
話をまとめると、ジンとベル嬢は両思い、次の成人の儀で2人とも孤児院を出なければならない、だからそれまでになんとかくっつけたい、と。
訴える幼女の大きい目は、うるうると潤んでいる。
見た目3才くらいだけど、これが素ではないのなら、可愛いを通り越して恐ろしい。
「ジンにいも、ベルねえも、だいすきなの…」
「だ!だ!だいすき?!」
「声がデカい!」
「しぃーっ!」
アルトの背中をこずくと、同時に小さな人差し指がその唇を塞いだ。
落ち着け僕。冷静になろう。
この幼女は多分知らない。
唇は、婚約者またはそれ以上でなければ、触れてはならないことを。
まだ3才かそこらなら、知らなかったでいける。
つまりノーカウントだ。
耳まで真っ赤な顔のアルトを助けなければっておい!どっちが主だ!
「…ミアと呼んだらいいかな?指を離そうか。」
幼女はこてんと首を傾げる。
これも素なのか?まったく末恐ろしいな!可愛いけど!
僕は、彼女の指をそっと離して、その頭を撫でた。
♢
今、僕らはミアを真ん中にして手を繋いでいる。
これはミアの考えた「手を繋ごう」作戦だ。
上手くいくといいけど。
アルトはなぜかぷるぷると震えている。
僕の護衛になって2年。こんな姿は見たことがない。
こいつは生粋の女嫌いだ。
相手が幼女とはいえ、異性と手を繋ぐなんて初めてなのだろう。
「ジンにい!ジンにい!あぶないから、てをつなぐの!ベルねえと!」
ミアはいまだ一人の世界に浸るジンに声をかけた。
「…あぁ、そろそろ行こうか。って、え?今なんて?」
「ジンにいは、ベルねえと、てをつなぐの!」
幼女は両の手をあげて、塞がっていることをアピールする。
「えーっと、そう!俺もベルも大人だから、手を繋がなくて大丈夫なんだ。」
「むー!」
眉を八の字にして唸るミア。
言い訳が苦しいぞ、ジン!男だろう!
かと言って、2人をひっつける方法が他に見つからない。
ミアは次にベル嬢に声をかけ、ジンと手を繋いでと言ったのだが…
「ミ、ミ、ミア、私は危なくないわよ?だから、ね?」
「むー!!」
幼女は、イヤイヤと地団駄を踏んで、だだを言う。
ベル嬢は明らかに動揺しているな。
…あ!思いついた!
「ジン、ベル嬢、手を繋ぐのが嫌かい?嫌なら僕がーー」
「「嫌じゃない!」」
声が重なり、ハッとして顔を見合わせる2人。
「え?嫌じゃないって、本当?」
「嫌じゃなかったら、何なのよ!」
あはは!あははは!
僕は、声を殺して笑う。
恋愛とは、なんてじれったいものなのなんだろう。
こしょこしょのお話は、こそこそ話です。
幼児は、秘密事と耳打ちが好きですよね。
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