果実水とおつまみと(2)
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アルトから毒なしの合図を受け、僕はようやくジョッキを手に取った。
鼻を近づけてすんと嗅ぐと、苦手な檸檬の酸っぱい匂い。
本当に甘いの?実は、罰ゲーム用の激酸ドリンクでした、なんてことはないよね?
僕は、胡乱げな瞳でアルトを一睨みして、ほんの少しだけ口に含んだ。
え?なんで?甘い!?
え?なんでもう空なんだ!?
甘い理由も、ジョッキの中身がなぜか空になってる事実にも、理解が追いつかない。
嬉しい!!
僕は、感極まって鳥肌が立つ腕をさする。
興奮も去ることながらアルトを見遣ると、チップスとかいうおつまみをパリパリと音を立てて、無心に食べ続けている。
また護衛の仕事忘れてるなー!
って、おい!僕の分は?
おーい!
「「果実水いかがでしたか?」」
再び給仕の双子がやってきた。
おかわり飲みたい!とキラキラした目で訴えてくる怠けた護衛を無視して、問い質す。
「美味しかったよ!どこで買えるかな?お土産に持って帰りたいんだけど。」
「「すみません、テイクアウトはやっていません。」」
何だって!?
うーん、仕方ない。
知りたい欲望には勝たないのが、僕の悪い癖。
「そうか、残念だ。誰が作っているのか教えてくれるかい?」
そう言って僕は、双子だけに見えるよう懐からアレを取り出した。
「「こ、こ、こ、孤児院で作っています。」」
「ありがとう。ギルマス呼んでもらえるかな?」
「「か、か、かしこまりました!」」
真っ青な顔をした双子は、逃げるように去っていく。
だろうねぇ。
これは、王族しか持てない紋章の入った金時計だ。
本当は使いたくなかったんだけど。
しかし、孤児院か。いいことを聞いた。
にんまりしていると、ドスドス疾く歩く音が近づいて、眼下で男が跪いた。
「ギルマスのミシェルです。ギルバード殿下、娘達が粗相をしたようで、大変失礼いたしました。」
「呼びつけてすまないね。可愛い娘さん達だね、粗相なんかしてないよ。檸檬の果実水が美味しくて気に入ったんだ。」
肝心の甘さはわからないままだけど、すっきりとしてまろやかに甘くて、とても美味しかった。
「恐れ入ります。こちらは、2ヶ月程前から孤児院の者が数日に一度持ち込みしているものです。私が毎日毒味していますが、誓って危険なものは入っておりません。」
まったく羨ましいな!毎日毒味なんて言って、本当はたっぷり飲んでるんだろう!
僕はムッとして話を続ける。
「製造方法を知っているかい?」
「…分かりかねます。調べさせましょうか?」
ギルマスでも知らないか。
依頼ついでに情報を得るしかない。
「いや、いいよ。今日はお忍びだからね。」
そう言って、ギルバードはちらりと奥の柱を一瞥する。
その目線の先には、ひょっこりと顔を出しては隠れる双子。
「とんだ無礼を!後でしっかり注意しておきます!申し訳ありまーー」
「おいおい、目立つだろう!ほら、頭を上げて!」
何とか宥めて、今日は街案内の依頼をしたんだ、と話すと一押しの者を呼んで来ると言う。
名前を聞くと、またもやジン。
一体何者なんだ。
後の伏線回収のため長くなりました。
おつまみチップスは、結局ギルバードの口には入らなかったという…。




