果実水とおつまみと(1)
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「2階で待たれますか?」
「…あぁ、そうさせてもらうよ。」
ちらちらと目線を送っていたのが、バレていたようだ。
とうとう隣から肘で軽く小突かれる僕。
わかってる、わかってるって。
この場は見逃してよ。
城では、少しでも顔に出したら虚をつかれる。
だから、いつもは完璧に平静を装っている。
王子という立場は本当に嫌気がさすな。
僕はため息を吐いて、アルトの後ろを追い、階段を登った。
一帯に広がる飲食スペースは、テーブル席が何十とあった。
王子である以上、いつ、どこで、襲撃に遭うかわからない。
談笑している数名の冒険者を横目で見つつ、僕らは距離を空けて座った。
「「いらっしゃいませ〜。メニューをどうぞ!」」
瓜二つの顔をした給仕の少女達がやってきた。
□新作! 檸檬の果実水 銅貨3枚
□ 甘橙の果実水 銅貨3枚
□エール 銀貨1枚
□おつまみ チップス 銅貨2枚
□おつまみ フライ 銅貨2枚
もちろんエールはまだ飲めない。
必然的に果実水になるのだが、僕は酸っぱいのが苦手だ。
そして甘橙は馴染みのある果物。味も想像できる。
悩むまでもないな。
「オレンーー」
「「檸檬の果実水がオススメです!」」
アルトを一瞥すると、眉間にシワを寄せて嫌そうな顔をしている。
そういえば、こいつも酸っぱいのが苦手だったな。
「酸っぱいだろうか?」
「「すっきりとしていて甘いですよ!」」
「甘いの?檸檬以外に何が入っているんだい?」
「「企業秘密です!」」
双子は続ける。
「飲まないなんて損するよね、ライラ」
「飲まないなんて損するよね、レイラ」
損するって、そんな大袈裟な。
秘密って言われると、気になるな。
味覚には自信がある。受けて立とう。
「じゃあ、檸檬の果実水を2つもらえるかな?」
「「ありがとうございます!」」
双子は上機嫌で礼を言って踵を返した。
甘い秘密はなんだろう。
まさか砂糖じゃないよな。
砂糖は、隣国から仕入れてはいるが、高値で売買されている。
城でもあまり出ていないというのに、それを贅沢にも果実水に使うなど、考えられないのだ。
「「お待たせしました!こちらはサービスです!」」
思考しているうちに、双子がジョッキと皿を持ってやってきた。
サービスだという楕円形のものは、メニューにあるおつまみチップスで、手で掴んで食べるらしい。
もちろん初めて見る。
双子の姿が見えなくなったところで、僕はアルトに2つジョッキと皿を渡した。
こんなところで毒入りなどないとは思うが念のためだ。
アルトは恐る恐るジョッキを煽ると、カッと目を見開いて、ゴクゴクと喉を鳴らす。
なんで一気に飲むんだ?そんなに美味いのか?
飲み終えるまで待つしかない僕の気持ちなど無視で、アルトはぷはーと美味そうにため息を漏らした。
銅貨=100ジェニー=約100円
銀貨=1000ジェニー=約1000円
金貨=10000ジェニー=約10000円
白銀貨=100000ジェニー=約100000円
くらいの感覚です。
おつまみチップス=ポテチ
おつまみフライ=フライドポテトです。




