虜になるよ
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次は、カットだ。
「ジェシカねえ、これ、かわつきで、ざっくりきって!あっちのかごは、かわをむいて、うすく、スライスで!」
「…二種類…作るの?」
「うん!どっちもおいしいよ!」
ジェシカ姉は、皮剥きの達人!
するする〜って剥かれた皮は身がほとんどついてないの!まだ11才なのに驚きだよね!
夢は、可愛いものに囲まれたお店をやりたいんだって。この間、こっそりわたしだけに教えてくれたんだ。
「ミア!これ何だ?まずかったぞ!」
「なめないで!なくなっちゃう!」
キッチンに入ってきたジン兄から液体の入ったコップを奪い取る。
これはオリーブオイル!
昨日ジン兄に、オリーブ(こっそり育てた)を潰して絞ってもらったのだ。
1日かけて抽出した出来立ては格別なんだ!
「へ〜、これが本当に美味しくなるのか?」
ジェシカによりカットされた物を見て、ジンが疑う。
信じてないようだ。
この美味さの恐ろしさを。
「…わかった。ジンにいのぶん、なしね!」
「ごめん!いるいる!食べたいです!何でもするから!お願い!」
この通り!と、ジンが手を合わせる。
くっくっく。上手く誘導できた。
わたしは、にやつきそうな頬をなんとか隠す。
「…なんでも?ほんとう?」
「本当本当!何でもする!」
「じゃあ、これ!ひょうめんのすいぶん、とって!カラカラにしないでね!」
カットされた物を全部渡して、水気を飛ばしてもらう。
キッチンペーパーがないから、吸い取るものがないんだよ。
むっず!!!ミア!まだか?!と叫ぶジン兄。
「まだまだまだ〜!がんばって〜!」
これは、風魔法が使えるジン兄にしか頼めないのだよ。気張ったまえ。
「あ!院長!」
騒がしいのに気づいた院長がキッチンにやってきた。
「…ミア、これには毒があります。小さな子でも知っているくらい危険なものです。」
院長の眼鏡の奥から、鋭い視線が向けられる。
だが、ここで怖気づいてはいけない。
普及すればお腹を空かせた民がいなくなるくらい大それた革命なのだから。
「どくは、とれる!これで、おいしいのが、できるの!」
「本当に?本当に食べて大丈夫なのね?!」
「うん!とりこになるんだから!」
院長にオリーブオイルでそれらを揚げてもらい、
みんなが見守る中、塩をふりかけ、毒味と称し味見。
もちろん言い出したわたしがする。
まずはこっち。
皮付きのほうをひとつ掴んでひとくちで頬張る。
あっふ!あちち!はふっ!はふっ!
目の前の腹ペコたちに安全と美味しさを存分に伝えるために、あえて齧らない。
はぁ〜おいし〜!
ほっくりした身にカリっと揚がった皮がいい仕事してる!塩加減もいい〜!
おっと!こっちも食べねば!
スライスのほうを一枚掴み、盛大に音をたてて齧る。
パリッ。パリッ。パリッ。
う〜ん!これこれ!
薄さがちょうどいい!さすがジェシカ姉!
いい感じに水気を飛ばしてくれたジン兄にも感謝。
そう。この元は、お腹も満たされる、魅惑の野菜。
馬鈴薯。
そして、揚げて作ったのは、皮付きのポテトと、ポテトチップス。
どっちも美味しいから、甲乙などつけられない。
口に運ぶ手が止まらないし、止まれない。
『俺の前脚が二本あるのは、二種類を掴むため。』
『おいし〜!虜になるねぇ〜!』
いつの間にか、猫と妖精も行儀良くお座りして、夢中で両手に掴んで食べている。
ごくりっ。
そばで誰かの喉が鳴る音が聞こえた。
じゃがいもは、花からではなく、種芋を撒かねば作れません。
フィクションですので悪しからず。




