魔性のアレを作る
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『…ねぇ、あれなに?』
『なにって、あれは例の畑だろ。他の何に見えるんだ?』
『立派な畑だねぇ〜。』
猫と妖精にも同じように見えるということは、間違いないようだ。
例の花を植えたのは、一週間前のこと。
院長に怒られまいと、のんびり育てる予定だった。
しかしそこに、やりたい!やらせて!と、土属性の兄妹が乞うてきた。
だから任せた。
魔法を使って十メートル四方まで増してなどと、断じてお願いしていない。
『二人に魔法を使わないようにと言ったか?言ってないな。』
『言ってないね〜。エリザ怒るねぇ〜。』
『あーあーあー。聞こえない。聞こえない。』
両耳を手でふさぎ、聞こえないふりをする。
院長への説明は、全部二人に任せる。
あの計画を実行すれば、院長だって喜ぶもんね!
わたしはふんすっ!と、気合いを入れて収穫に向かった。
「あっ!ミアだ!ミア〜!」
「ミア〜」
満面の笑みで、兄妹が駆け寄ってくる。
その手には収穫物。
「見て見て!どう?美味しくなる?」
「どう?どう?」
わたしは、そのひとつを手に取って、まじまじと見つめる。
皮、薄め、よし!
表面、なめらか、よし!
形、ふっくら、よし!
かたさ、よし!
しなびた感じも、変な柔らかさもない。
「うん!いいね!おいしくなるよ!」
「やった!楽しみ!」
「わぁい!わぁい!」
喜びのあまり小躍りする二人。
育てる楽しさを覚えたのか、食に貪欲なのか。
『言うまでもなく後者だな。同類のにおいがする。』
『何作るの〜?楽しみ〜!』
ここに前者はいないらしい。
まぁ、いい。魔性のアレを作るのだから。
「ふたりとも、まりょくはだいじょうぶなの?」
「心配ご無用〜まだまだ余裕!」
「よゆう〜」
二人は、目をキラキラと輝かせて、親指を立てる。
魔力枯渇になったら、院長の雷が!と心配したけど、まだまだイケるみたいで安心した。
「じゃあ、もっとしゅうかくしよっか!」
「「はーい!」」
♢
カゴいっぱいになった例の物を三人でキッチンに運ぶ。
もちろんみんなで作るのだ。
まずは、土を落とさねば。
「アクアおねえさま〜、これあらって〜」
「!?それには毒がーー」
「どくは、とればいいの!おいしくなるよ〜!」
「なんですって?!天使にかかれば、これもおいしくなるのね!」
アクア姉に包丁はまだ危ないから、洗うのを手伝ってもらう。
水属性レベル3の彼女は、手からジェット噴射みたいに水が出る。
土が綺麗に取れて便利だね。
ちなみに、アクア姉って呼んでも、聞く耳をもたない。
あと、天使じゃないよって何回も言ったのだけど、天使だって言い張るから、好きに呼ばせている…。
次は、毒取りだ。
「ベルねえ〜」
「ミア、アクアも言ったけど、これには毒があるのよ?」
「どくはめだけなの!これをとれば、どくはなくなるよ!」
これだよ、とひとつの芽を指差す。
ベル姉は包丁で芽取り係。
ふっふっふ!
ベル姉に好きな人がいること知ってるよ。
その人もベル姉が好きなことも知ってるよ。
花嫁修行を兼ねて、料理上手になってもらうんだ。
これも計画のうち。
わたしは、ひとりニヤニヤと笑うのだった。
正解は次話で!
夜中に無性に食べたくなるアレですよ!




