解せない
ビリ…ビリリ…
ードンッ──
(…ベル…すまん…。みんなを…頼む……。)
抱いていた猫からの強い衝撃に、俺はバランスを崩し、そのまま意識を手放した。
♦︎
(…あれ?俺…死んだんじゃ?)
見慣れたボロボロの天井に、カビくさい懐かしい匂い。
(…間違いない。生きてる。あぁ良かった…。ったく!あの猫!俺が何したってんだよ!)
苛立つのも束の間、左手に違和感を覚えた。
(カサついた院長の手じゃない。ぷにぷにのミアの手でもない。…誰の手だ?)
俺は痺れる首をなんとか左下に向ける。
「ーー!?」
なんとベルが俺の手を握っているではないか。
さらに、彼女は俺の方に顔を向けて、すーすーと寝息をたてている。
(可愛いなぁ!このまま寝顔を堪能するか、開かれた瞳に映る俺を見るか、悩ましいな。)
ベルとは、いわば幼馴染。
隣家に住んでいて、両親同士仲が良かった。
だから、物心つく前から一緒で、兄妹みたいな関係だ。
(結婚の約束したの覚えてるか?ベル、俺は本気だぞ?)
まだ痺れる右手に力を入れ、愛おしい彼女の頭に手を置く。
「…ぅうーん…。」
重みに気づいたのだろうか。
ベルの目がゆっくり開き、その空色の瞳に俺が映る。
「あ、ベル、心配かけてすまん。」
「…ジン!?目が覚めたのね!!もう!心配したんだから!昨日からずっと眠っていたのよ!」
「ごめんって!…いてててっ!」
潤んだ瞳の彼女を抱きしめようと身体を起こすも、痺れが身体中を駆け巡る。
「どこか痛いの?!院長呼んでくるわ!」
「まてまて!まだ院長は呼ぶな」
「?」
俺は、目が点になっている彼女から、左手に視線をずらす。
「もう少しこのままでいたいなぁ…なんて!」
「?!ジンの馬鹿!心配して損した!」
状況に気づいたベルは顔を真っ赤にして、踵を返し走り去って行った。
(ベルのあの顔、何年振りだ?可愛な〜!)
俺は、ニヤニヤしながら、彼女の可愛い寝顔と、赤面を脳裏に焼き付けたのだった。
この後、院長に厳しく説教された様子の涙目のミアと猫が来て、事の経緯の説明と謝罪を受けた。
俺が強くなるためにしてくれたことだったから、とても叱る気にはならなかった。
もっとみんなを守れるし、もっとお金を稼げるし、これぐらいなんてことない。
実際、初級のレベル1しか使えなかった魔法が一気にレベル3までアップしたし、なんら問題はない。
たださ、俺が寝込んだ1日の間に、俺以外が全員、レベル3になったってのは何故だ?
誰も寝込むことなく、痺れもないとか、何故だ?
俺で実験したとか言わないよな?
あれから一週間たつのに、まだ痺れが残ってるから、今日も院長特製の劇マズ薬草茶を飲まされてる。
…解せない。
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