8.悪夢の行進 Ⅰ
私達は夢を見る。永遠の日常を。優しい世界を。
▽????▽
外は暗い。ビルの明かりも消え失せ、辺りを照らすのは規則的に並べられた街灯のみになった。散歩をするには最適でしょう。
しばらく散歩すると水滴がコートを打つ音がし始めた。記憶によれば【雨】というそうですね。こんな時だけはコートが黒色で良かったと思います。それに、今の私には黒がよく似合う。
「こんばんは、今日は二人?派手にやりましたね」
暗がりの奥で動くヒト型のモノに声をかける。
「ぁあア、あアァ」
「そう、罪の意識も無く、貴女は悪夢を見続けるのでしょうね……しかし、もうすぐですから、待っていてください」
△ △
▽ケイ▽
買い物を終えて、あとは二人で家に帰るだけ。まるで夢のような一日になった。あの件以来、少しぎこちなかった彼女の態度も今日をきっかけに変わってくれるだろうか。
「ケイ、半分持ちましょうか?」
「いいよ、女の子に荷物運びをやらせる訳にはいかない」
「でも、私の方が力ありますよ?」
「いや、たぶんそうなんだけど……そういう問題じゃないんだ」
「よくわかりませんがわかりました」
などと他愛無いやり取りをしながら抜け道を歩いていると
「ケイ、少し速く歩きましょう。後ろは見ないでください」
と、急かされる。どうやら良くない輩に尾行されているようだ。
「ここなら誰もいませんね」
人の殆どいない路地に誘い込むとラーラットが振り向く。
「あなた……もう人ではありませんね」
彼女と同じように振り向いて尾行者を見る。一応ヒトの形はしているものの人とは言い難い。体長は少なくとも2m。全身が黒色の毛に覆われている。それに鋭い爪に牙。一言で表すなら狼男、というやつだろう。
「ぁあア、ぁアァ……は、ハぁ……」
気味が悪いうめき声を上げながらこちらに近寄ってくる。
「ケイ、しっかりしてください。今その手を放せば卵が無駄になります」
「そ、そうだな。で、あれは人なのか?」
「もう人ではありません。能力を暴走させたのでしょう。申し訳ありませんが、犠牲が出る前にここで討ちます」
腰が抜けそうになっている俺に比べると彼女はかなり冷静だ。いや、俺がビビり過ぎなのか……
「ケイ、下がっていてください。くれぐれも先日のような事はしないでくださいね」
「善処する」
今はああなっているとはいえ、人が殺されるのを容認するのは辛い。だが、これで多くの人が救えるのなら、仕方の無いことなのかもしれない。
「行きます」
彼女が弾けるように加速する。あの身体能力なら10数メートルあってもないようなものだ。ただ、狼男の方も彼女の動きに反応し迎撃の体勢に入っている。
彼女は右上から振り下ろされる爪をクルリと躱すと狼男の胸に光で作ったナイフを突き立て、蹴り飛ばす。
狼男は壁に激突し、そのまま動かなくなる。
「……帰りましょうか」
彼女がそう言って踵を返すのと、壁にもたれていた狼男が飛びかかるのは同時だった。
△ △
皆様いつもありがとうございます。
カワウソです。
ぶっちゃけここからが2章です!次は来週になると思います。




