2話 学びと洗礼
父親の消息不明調査が家庭に入る。
聖騎士である父親の消息不明を機に、学校に通わせていなかった等の家庭環境の異常が発覚し、王都の高校へ通うことに。
ジロジロと見られるアリス。
初めて大勢の視線を浴びアリスは人の目を敏感に感じとってしまうがそれが好奇の目なのかなんなのかは分かっていない。
これまでは母親と家の中しか知らなかったので、学校で向けられる視線が悪意なのか、単なる好奇の目・珍しさなのか、区別がつかない。
どういう目なのか分かっていないが居心地の良いものではないと感じているようだ。
「外の世界は醜く危ないのよ」「この世界であなたを受け入れるのは私だけよ」とずっと教え込まれてきたため、アリスの心の中には常に外の人間は脅威かもしれない、という恐怖や警戒心がある。
周りからの視線を無意識に警戒すべきもの、攻撃の予兆として感じているかも知れない。
リタというリーダー格の女子生徒が声をかけてきて友達になる。
初めての友達ができる。
リタの他にリタの幼馴染のジェニファーも友達になる。
いつしかアリスは憧れを抱く。
学校で度々ある男子と目が合う。
今まで無かった同年代の子の情報が洪水の様にアリスへ流れ込む日々。
様々な書物を読んだり、色々な話を聞いたり。
リタやジェニファーから色々教え込まれていた。
青春を謳歌し学校生活も順調に過ごしていた。
何事も順調そうに見えていた。
しかし。
「やっぱり、ママの言った通り……」
学校で悪意というものを味わう。
「ママー、ママの言った通りだったよー!ママー!うぅ…」
母が言っていた事をアリスは実感する。
外の世界は醜く危ないと。
「バーカ。あたしがあんたみたいな芋くさいやつと友達になるわけないじゃん!はは!フレネミーってやつだよ!あ、フレネミーって分かんないか?無知だもんねー!教えてあげる。フレネミーってやつはね…」
と初めてできた友達、かけがえのない存在にその説明を丁寧に分かりやすく説明された。
親愛の皮を被った毒の洗礼。
外の世界を知らない純真無垢なアリスにとって、初めてできた友達という存在は、眩しい憧れであり救いだった……。
しかし、そこから突き落とされた。
世間知らずでピュアで、外の世界の濁りを知らないアリスにとって、これが初めて知る人間の悪意の味。
「アリス…ママが守ってあげる。そいつらに分からせてあげないと…罰を与えなければ……」
傷つき泣き崩れるアリスを母は優しく抱きしめ包み込む。
母子共に傷ついたが、それでも通わなければいけなかった。
通わないと引き裂かれてしまう。
親子共々我慢し学校に通い続けた。
ある日アリスはミスコンでトップになりキラキラのステージにスポットライトを当てられ立っていた。
それは作為的に組織票でトップにされていた。
地味で隠されて生きてきたアリスが、あえてミスコンのトップに祭り上げられる。
これは彼女に好意を寄せたからではなく、最高潮まで持ち上げてから、一気に突き落として最大の羞恥を味あわせるための、悪意ある見せしめ。
そんな事は知る由も無く純真無垢なままステージに立つアリス。
全方位から悪意に囲まれ、どす黒いスポットライトの真ん中で晒されているアリス。
彼女自身は何が起きているのか、なぜ自分がここにいるのか、もよく分かっていないまま、ただ眩しいスポットライトを浴びせられている。
周囲の生徒や仕掛けた人間たちの目的は、彼女を称えることではなく、一番高いところから、このあと最高にみじめな形で叩き落として、最大の羞恥を味あわせるという、極めて陰湿で悪質な行為を楽しんでいる。
女子生徒が「この衣装絶対に似合うから着てステージ上でこのヒモを引いて皆に居披露して」と言われアリスはそれを実行する。
会場は一瞬凍りつく。
アリスはその場の全員から笑いものにされる。
多種多様な声が耳を貫く。
極限の羞恥・悪意に晒された。
涙を溜めたアリスの瞳に映る嘲笑者達。
「ママ…神様……」
アリスの背後に優しい笑顔の男。
その男が優しくアリスを抱きしめ耳元で囁く。
「よぅ、ねえちゃん。やっちゃおうか」
そしてそれは起こった。
周囲は劫火と赤い海。
アリスと笑顔の男は赤い雫塗れ。
笑顔の男は赤い雫が着いている顔をより一層笑顔になり囁く。
「ねえちゃん。行こっか」
笑顔の男はアリスの手を取る。
「まて!好きにはさせない!」
そう声をかけ対峙しているのは学校でちょくちょく目があった男子。
その男子に目もくれずにやついている男は
「なんだアイツ……。ねえちゃんは俺だけ見てりゃあいい…俺が守ってやんよ」
と魅惑的な笑顔でアリスを見つめる。
「行くぜ…」
「アリス!耳を貸すな!ソイツは……」
プツン―
———
無機質なデスクの上にあるモニターの画面に映るミスコンの惨劇。
そこにはあの男もあの男子も映っていない。
アリスの背後は劫火。
アリスは地面に足が着いていない。
宙をゆっくり歩き周りの人間を弾き飛ばしつつ歩む。
社会や学校、リタやのような悪意ある人間たちから追い詰められ、アリスのなかのリミッターが外れて学校や町ごと焼き尽くすほどの能力が暴走しそうになっている映像が映し出されている。
ビデオカメラの横に座る女性が落ち着いた口調で問いかける。
「それで、お母様、詳しくお話お願いします」
「……」
———
赤い雫塗れのアリスは一点を見つめながら歩き続けている。
「ママ……早くママの元へ帰りたい……」
「よう…ねえちゃん…俺が連れていってやんよ」
「おい!簡単に言うなよ!」
「わーってるよ。ギャーギャー喚くな…あいつらやらねーとな…」
「アリス、ママの元に帰るにはね…」と男子は優しく囁く。
男は遮り
「俺が言う!お前はアリスと喋んな!アリス…」
「君のママはきっともう捕まっている」
「ママ!」
「ねえちゃんはあの魔女の末裔で狙われていたんだ。さっきの事で場所バレちまって奴らがねえちゃんを狙ってくる」
「私の事はどうでもいい!ママを助けなきゃ!」
「ママの事愛してんだな…。いいぜ。俺が力かしてやんよ」
「お前…!アリス、僕が守ってあげるからね」
「いい……。大好きなママは私が絶対に助ける!!」
———
続く
———
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