3話 母子
エイミー・バイオレット
こんなところまで来てわたしは、なにをしているのだろう?
こんなわたしは、必要とされてますか?
聞こえてますか?
わたしは嘘つき。
憧れができました。
でも叶うはずもないもの。
誰かを妬むようになってしまいました。
神様ごめんなさい。
わたしはこんなことまでして愛されたいの?
もう器は壊れかけているのよ。
こんなわたしだって本当は愛され愛しても良い。
ねぇ、そうだよね?
答えてよ。
私にも憧れができました。
いつの日か欲張りになってしまいました。
あなたを妬む様にもなってしまいました。
嫌いになるようにもなってしまいました。
そんな事いいの?
一歩一歩階段を上がるけれどもうどうすればいいか分からないよ。
教えて。
わたしの願いは、いつだって愛される純粋なあの子。
でも私はそうじゃない。
憧れはいつだって愛されるあの子で純粋なあの子で何もかもあるあの子で、いいな。
かなうはずないもの。
でもいいの。
そんな私が私だから。
世界と滅びるまでは私が─。
エイミーは目を覚まして横で寝ている幼子を優しく撫で声をかけた。
「おはよう。わたしの大事な大事な愛しの子。わたしのようにならないように守るからね。あなただけは……神様ごめんなさい……あなた様よりも大事になってしまいました……」
———
アリス・バイオレット
残骸を歩むアリス。
「…ママ…。私にも憧れができました。
いつの日か欲張りになってしまいました。
あなたを妬む様にもなってしまいました。
嫌いになるようにもなってしまいました。
そんな事いいの?
一歩一歩階段を上がるけれどもうどうすればいいか分からないよ。
そんな私は悪い子?
教えて」
アリスは涙をためる。
「こんな私はきっとママに愛されない、悪い子になってしまったのだろうか……でも。それでも私は大好きなママを助ける!!」
アリスは二人を見る。
「私は弱い!だから、この人達に助けてもらうしかない!」
そうだ。学校生活を思い出せ。あの憧れていたリタとジェニファーのように……。
笑顔で二人に語り掛けるアリス。
「ね、ねえ、力、か、貸してほしいな……」
自分をハメて笑いものにしたリタやジェニファーたちフレネミーが、普段どんなふうに人懐っこい笑顔を使い、親しげに近づいて他人を油断させていたか。
その人間の悪意を隠した笑顔のやり方を、図らずも体験として学習してしまった。
アリスはスポンジのように水を吸っていた。
外の世界を知らず、純真無垢な聖女として育てられたアリスは、文字通り白紙のまま世間に放り出された。
だからこそ、初めて浴びた悪意、初めて見せつけられた人間のドロドロとした嘘や笑顔の裏側を、恐ろしいほどの吸収力(適応力)で血肉に変えてしまった。
純白だった少女が、真っ黒な者たちが使っていた黒魔法をそのまま会得していた。
アリスは外界の汚染を知らないからこそ、それを悪意ある笑顔や打算的なものとしてではなく、親愛として人間関係の正しい形として理解していた。
「!!」
「俺は最初からそのつもりだぜ」
「僕もだよ」
「2人共ありがとう」
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