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RG50E  作者: HARIMA
26/47

㉖求愛。

その日は、部活を終えた後。


部員達各々が後片付けを済ませ、互いに"お疲れ様”と挨拶を交わしながら帰って行く中。

烈貴は精神的疲労の為か、なかなか音楽室の席を立てずにいた。

美葉も、そんな様子の烈貴を気にかけ、席を立とうとはしない。


気が付けば、夜の音楽室は二人きりになっていた。


外のグラウンドでは、野球部がナイター設備を使って練習を続けている。

彼らも甲子園へ向けた地区予選を目前に控えているのだ。


………烈貴は、椅子に座ったまま黙って俯いている。

トロンボーンを仕舞ったケースも、未だ足元のままに。


「先輩………いつもより疲れてるみたい」


美葉は一人用の椅子を並べ、烈貴が横になれる場所を作った。

即席のベンチだ。


「ここに、横になって」


美葉は自分の座る横に並べられた三つの椅子へと烈貴を誘う。

フラフラと従う烈貴が、ゆっくり身を横たえると………頭を、スカートに包まれた自分の太腿へと乗せる。


最初、仰向けに横たわっていた烈貴は。

自分の表情を美葉に見せたくなくて、横を向く。

目の前に、白いブラウスの美葉の腹部がある。

ナイロンと木綿の混じった、洗いがけの繊維の匂いがした。


力無く身を委ねる烈貴の頭髪を、美葉は優しく撫でる。

何故、今、彼がこうなっているのか?

美葉には解る気がしていた。


茫然自失の烈貴が、呟く。


「………俺………………美葉ちゃんを、好きになる資格無い………」


「………え?

どうして?」


美葉は変わらずに。

烈貴の顔を見下ろしながら、自分の腿に乗せられた烈貴の頭を撫で続けている。


烈貴は呟きは、震えを帯びる。


「………だって、俺…………俺…………」


烈貴の顔が、みるみるうちに歪み。

閉じた瞼から涙がつたい、美葉のスカートを濡らした。


美葉は微かな笑みを湛えながら、しばらく無言で烈貴の頭を撫で続けていたが。


「………先輩、あのね。

私にも、コレだけはイヤ!っていうのがあるの」


烈貴は流す涙をそのままに、黙って聞いている。

美葉は続けた。


「私………先輩にとって。

好き"だった”人には、なりたくないんだ」


烈貴は美葉の腿の上で、瞳を見開く。

美葉は少し、椅子を座り直す。


「………今と、これからが。

ずっと先輩と一緒なら、他に何も要らないの。

………フフ、ちょっとワガママかな?」


そう言って顔を逸らし、笑ってみせる美葉。

手は、烈貴を撫で続けている。


烈貴は、思わず美葉のブラウスの腹部に顔を埋めた。

顔全体が美葉の温かさと柔らかさに包まれ、衣服と混ざった香しい匂いと共に烈貴の心を癒し始める。


「あん……(笑)

お腹、お肉付き過ぎだから、恥ずかしい」


烈貴の頭を抱えながら、美葉は照れ笑いする。


ブラウス越しの美葉の匂いを鼻いっぱいに吸い込み、烈貴はウットリとする。


「………こうしてると、何か、スゴく安らぐ」


顔を埋めたまま、烈貴は呟く。

美葉は笑みを浮かべ、見下ろしながら好きにさせていたが。


「私、ダイエットしようかな?って考えてるの。

あんま太り過ぎだから」


「え!?」


思わず顔を向ける烈貴。

何やら慌てている。


「ダメだよ、ダイエットなんかしちゃ!

このままがいい………この方が好き!」


本当に困った表情をしながら腹部に頬ずりする烈貴が。

美葉には、まるで小さな子供がダダを捏ねてるように見え、可笑しくて声を出し笑ってしまう。


「ハハハハハ!

まさかの腹フェチ(笑)?

そんなにイイの?」


相変わらず顔を埋めたままの烈貴が、何度も頭を大きく振って無言で頷く。


「そっかぁ。

先輩が、そんなに言うんなら………やめとこうかな?

でもさ、これでゴーサイン出したら私の場合歯止め効かなくなって。

マジでブクブクになっちゃいそうだけど(笑)」


「それでもイイ!」


「マジで?

お相撲さんみたいになっても!?」


「ウンウン!

それでも美葉ちゃんを好き!!」


「今の聞いたよ(笑)?

約束だよ!?」


「ウンウン!!」


本当に嬉しそうな烈貴を眺めながら、笑う美葉。


音楽室の時計は、夜8:00を少し越えていた。





その週の土曜日の午後。


カチャ、バィーン!

バィーン!


烈貴は自宅前に出した、RG50Eのエンジンに火を入れる。


目指すは展望台。

目的は………莉奈と話をつける為。


(これ以上、美葉ちゃんに甘えるわけにはいかない。

これは………俺の問題なんだ!)



続く


〈求愛・完〉

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