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厨二で何が悪い! ~前世の記憶が最強すぎて他の召喚者たちがまるで相手にならない。Eランク勇者の俺が世界を救ってみせる~  作者: その辺の双剣使い
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89.失われた記憶の欠片②



 神殿の中央で輝く光源の正体は、空中を浮遊する青色のクリスタルだった。

 どういった仕組みなのかはわからないが、石で造られた台座の上でゆっくりと回転しながら宙を浮いている。縦に長く、大きさは50センチくらいだ。

 ミコトは触れると言っていたが、回っているので文字どおりの意味ではないのか。


「じゃあ、さっさと試して次の目的地に向かうか。そんで触れるって言ってもどう触れば良いんだ?」

「直接触らなくても大丈夫だよ。近くまでいって手をかざしてごらん」


 俺は、ミコトに言われるがままクリスタルの方に進み出る。

 これに触れる事で、思い出すのスキルレベルが一気に上がるかもしれない。そんな期待を胸に、俺は意を決して青く光る結晶にゆっくりと右手を近づけていく。

 もう少しで、完全に手が触れようといった瞬間。クリスタルは輝きを増し、俺の全身も青白い光に包まれていった。



 享保二十年。吉宗公による幕政の大改革も終盤に差し掛かっていた頃。貧乏御家人の家に嫡男として生を受けた俺は、元服の時を迎えていた。

 様々な前世の記憶を持っていた俺は、武人だった際の経験により武芸にだけは秀でていた。

 世界中の知識についても豊富だったが、この時代のこの国ではそれを活かす伝手を見つけるのは非常に難しい。そのため俺は元服に際し、剣の腕一本で身を立てようと心に誓った。


 この先の人生に不安を感じながら日々を過ごすなか、俺の運命を大きく変える事になったあの日は、何の前ぶれもなく突然やってくる。


 禁足地とされている場所の近くを通った際、俺は迂闊にも神隠しに遭ってしまう。

 そういった事象に鋭い勘を持っていた俺は、普段からその場所に徒ならぬ気配を感じており、なるべく近寄らないよう気を付けていた。しかし、同じ道場に通う門下生の悪ガキどもを見かけ、声をかけようと後を追ったのが失敗だった。


「おい! お前たち! そこは入っちゃなんねぇ」


 俺は、坊主どもにそう声をかけるが時既に遅し。

 門下生の悪ガキどもは、俺が止めるのも無視して禁足地とされる森の中に何かを追って入っていく。すると、次の瞬間その森は怪しげな紫色の光に覆われ始めた。


 坊主どもは大丈夫だろうか。当然、そう心配する気持ちもあったが。状況を見るに、尋常でない恐ろしい何かが起きているのは間違いない。助けに入ったところで、あいつらを救いだす事ができるなんて、とても思える様子ではなかった。


 坊主たちには悪いが、森の中に入りさえしなければ大丈夫だろう。そう思っていたが、その考えは甘かったようだ。

 すぐにその場を離れれば良かったものを、俺は坊主たちを心配するあまり茫然と森の様子を窺っていた。

 結果、俺の体まで森と同じ光を放ちはじめる。気づけば、いつの間にか意識を失ってしまっていた。



 ただ真っ白い空間が広がっている。

 目の前には、背中に大きな翼の生えた紅毛人(オランダジン)のような男が佇んでいた。

 バテレンの教えにある、天使というやつなのだろうか。この男を見ていると、十字軍の兵士として戦っていた頃の事を思い出す。


「主は、天使というやつなのか?」


 俺の問いかけに答える事もなく。その翼が生えた男は、まるで幽霊のようにこちらにゆっくりと迫ってくる。


 有無を言わさずというやつか。天の使いだからといって、強引すぎるにも程があるだろう。

 そう思った俺は、目の前まで迫り、突然姿を消した男の気配を拒絶する。消えると同時にその存在は、明らかに俺の中に入ろうとしているのを感じたからだ。

 しかし、必死の抵抗も虚しく、男の気配は着実に俺の魂を侵食していく。


「こんな抵抗を受けるのは、今回が初めての事だな……我が名はアテュエル。ハーウェに仕える第七位天使の一柱なり」


 アテュエルと名乗る男の声が響くと、俺の視界は再び暗転する。気づいたときには、冷たい石の床に倒れ伏していた。

ここまで読んでいただき、ありがとうございます。

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