87.遺跡のトラップ②
脇道に入りしばらく進んだ所で、ミコトは更に左の路地へと入っていく。
一人で攻略していた際には、相当迷いに迷っただろう。しかし、今の彼女は悩む様子など全くなく、完璧に道順を記憶しているかのような動きを見せていた。
当然、案内板のような物など有るわけもないが。それでも彼女が入っていった場所は、初見では絶対にここだとわからないような、周辺の物と全く変わらない普通の路地であった。
通路は完全に一本道であり、そこを抜けると建物に囲まれた大きな円形の広場に出た。
その広場を抜ける道は、どうやら反対側に見えるもう一つの路地だけのようである。
如何にもトラップが有りますといった雰囲気だが、そんな俺の予感は見事に的中したようだ。
「魔物どもの相手は、カケル達に頼んだよ! ボクはトラップの解除に専念するからね」
突然そんな事を言い出すミコト。
広場に足を踏み入れると、その場所全体が紫色の光に包まれる。よく見ると円形の広場そのものが、巨大な魔法陣となって輝いていた。
光は一層増し、地面の中から数十体の、六つの腕を持った骸骨剣士が現れる。
反対側の路地が塞がってしまったわけではないので、そのまま突破しても良さそうな感じだが。どう考えても、そんな簡単なトラップであるはずもない。
ここを通過するには、こいつらを倒す事が条件なのだろうか。
そんな事を考えていた俺だったが、次にミコトが発した言葉によりこの場所の仕掛が明らかとなる。
「全部倒しても、次から次へと湧いてくるからね。時限式の転移陣を時間内に解除できないと、遺跡の入り口まで戻されちゃうから魔物の方は君たちに任せたよ」
なるほど、そういう事か。要するにミコトがその転移陣の解除に専念するから、俺たちは邪魔をさせないよう魔物の相手をすれば良いというわけだ。
とはいえ、先ほど考えていた事も少し気になる。
「そのまま向こうの通路まで突破するってのは駄目なのか?」
「当然それも試したけど、またこの広場の入り口に戻ってくるだけだよ」
確かにかなり厄介なトラップのようだ。転移陣の解除が、どれだけ難しいものなのかはわからないが。次から次へと現れる魔物を気にしつつ、作業をしなければならない状況はかなり骨が折れるはずだ。
地面に手を当てながら、目を閉じ集中する様子のミコト。それと同時に魔物どもは、俺たちの方に向かって動き出した。
「アム! アイシャ! いくぞ!」
「オッケー、やったるわ」
「三つ目の巨人とかに比べれば、今回のは大したことなさそうな相手にゃね」
かけ声と同時に、俺たち三人は一斉に動き出す。
俺は、エリスにもらった魔剣を抜き、アイシャは鉤爪による激しい肉弾戦を繰り広げはじめた。
アムは、周囲に何十個もの光弾を出現させ、一気に殲滅する構えをみせる。
アイシャの言葉どおり、この場所に至るまでに現れた魔物どもと比べればそれほど大した相手でもなく。俺たちは、五十体ほどいた骸骨剣士どもを僅か数秒で粉々に打ち砕いていった。
しかし、ミコトが言っていたとおり、一たび殲滅しても魔物どもは後から後から湧いてくる。
全くもってきりがない。仕舞いには、巨人のスケルトンまで現れる始末。とはいえ、俺とアイシャの二人だけなら苦戦しそうな相手でも、アムの力があればそれほど問題はなさそうだ。
骨の一本や二本折っただけでは、動きを止める事のない巨人のスケルトンだったが。思ったとおりアムの放った例の光線が、巨大な骸骨戦士の上半身を一瞬で消し飛ばす。今回はふざけている余裕がなかったのか、この前の技名を彼女が叫ぶ事はなかった。
「終わったよ。今回はカケル達のおかげで、ずいぶんと余裕をもって作業できたね」
巨大スケルトンを倒した直後、俺たちの所にやってきたミコトが後ろからそう声をかけてくる。彼女の言葉と共に魔法陣の光は次第に薄れていき、それは数秒の後に跡形もなく完全に消滅した。




