86.遺跡のトラップ①
神級強化魔法の効果が切れる前に、俺たち二人はなんとか百体近い魔物の群れを全て倒す事に成功していた。
当然ミコトとアムは、一切の手出しをしていない。完全に彼女たちは高みの見物だった。
ここまでの戦いを経験して感じたことは、俺やアイシャ程度のレベルでもなんとかなるという事だ。相方がアイシャではなくエリスであれば、もっと楽に進められたかもしれない。
そこで一つ疑問に感じたのは、ミコト程の亜神がどうして攻略に何度も失敗しているのかである。まさか、この先もっと難しくなっていくとでも言うのだろうか。
少なくとも今のところ、この遺跡は強力な魔物が出現する以外これといって特徴のない攻略ステージだ。
「ふぅ、俺たちだけでも取りあえず何とかなったな。ところで、魔物の強さだけなら、ミコト一人でもこんなとこ楽勝なんじゃないのか?」
「魔物の強さだけならね。この先もっと強くなっていくけど、ただ倒すだけなら確かに全くボクの相手じゃないよ」
やはり魔物の強さだけなら、ミコトにとってはこれ以上の相手だとしても楽勝らしい。という事はこの先、魔物どもを簡単に屠れる力を持っているだけではクリアできないようなトラップが、数多く存在しているとでもいうのだろうか。
それにしても、途轍もなく広い遺跡だ。生半可な力で挑んだとしたら、この辺りで引き返すという選択肢すら諦めざるを得ない状況になっていただろう。
ゲームであれば、リスポーンすれば良いくらいに考えるところなのだろうが現実は死ねばそれまでだ。
そんな風に思っていた俺だったが、この後すぐそれに近い状況に全員が陥る事となる。
更に強くなっていく魔物どもを倒しつつ、俺たちはようやく神殿のような建物が見える場所までやってきていた。
「確かこの辺りだね」
正面に、石造りの大きな建物が見える大通りを見つけた俺たちだったが。そこに入ってから突然、道の真ん中で立ち止まったミコトが呟く。
「何か、この通りにはトラップでも仕掛けてあるのか?」
先程までトラップの事について考えていた俺は、ミコトの様子から察しそう質問する。
「そうだね。この大通りは、何ヵ所か無限ループになっているみたいだよ」
「なるほど。それじゃ普通に進んでも、永遠にあそこに見える神殿にはたどり着けないってわけか」
そんな俺の言葉に対し、アムは面白くなさそうな顔で言う。
「この世界の神にしては、なかなかやるじゃないの」
アムが、自分の主以外の神を馬鹿にしたいのはわかるが。これだけの広い通りをループさせるなんて、実際のところかなり凄い能力の持ち主だ。マリーザという神は、空間を操る能力に長けているのだろうか。そう言えばミコトが以前、普通に向かっても遠くに見える大樹にはたどり着けないとも言っていた。
素直じゃない駄天使の言葉に、面白くなさそうなミコトだったが。せめてもの救いは前回のやり取りで学習したのか、この世界の神という表現をしたことである。
一応ちゃんと危うい立場である事を自覚しているようで、その点については少し安心した。
「大通りのトラップだけなら、正解のルートを見つければ良いだけだからそれほど問題はないんだけどね」
ミコトの口ぶりから察して、厄介なのはループ以外の別の仕掛にあるようだ。この先、彼女でも手を焼くようなトラップが待ち受けているのかと思うとかなり緊張してくる。
自然な感じで脇道に入っていくミコトの後を、俺たちは黙ってついていく。どうやら先ほど言っていたこの辺りというのが、今から入ろうとしている脇道の事のようだ。
十年ぶりの再挑戦にも拘わらず、しっかりと場所を覚えているなんて。伊達に神の眷属を名乗ってはいないなと、俺は彼女の記憶力に少し感心した。




