82.聖域の魔物①
黒色の、通常よりも一回り大きなサイクロプス三体を、俺は左腕による攻撃であっさりと蜂の巣にしていく。
音速が限界の一般的な火器であれば、奴らの分厚い皮膚と強靭な筋肉を貫くことなんてとてもできなかっただろう。
しかし、超音速の弾丸は、この場所にのみ出現する上位互換的とも言えるサイクロプスにも十分通用した。
ミコトの説明によれば義手から発射される弾丸は、強力な電磁場を発生させる事によって加速されているらしい。所謂レールガンというやつである。
最初に訪れた獣人族の集落から遺跡までは、二日程の道のりだった。途中いくつかの集落を通過したが。俺たちは、ここまで特に問題なくたどり着く事ができていた。
話によると、ガルフの治める部族が遺跡への挑戦者を審査する役割を担っていたようである。そのため通過する際に立ちよった他の部族の者たちが、俺たちの行く手を阻むような事は一切なく。どの部族もスムーズに通過を許してくれた。
アイシャが案内役を勤めていたのも、かなり利いていたのかもしれない。
こういった事も想定していたのか。意外にもミコトは、彼女の同行をあっさりと了承してくれていた。
巨大な石をいくつも積み上げ作られた古代遺跡は、長いあいだ放置されているにも拘らずとても綺麗な状態だった。まるで何者かによって、定期的に手が加えられているかのようでさえある。
至るところ蔦に覆われてはいるものの、風化による建物の損傷などは全く見られない。
それもそのはず、俺が放ったレールガンの流れ弾が当たっても、外壁などには傷一つ付いている様子はなかった。
「やっぱり超古代の神殿だけに、使われている石は普通の大理石とかじゃないのか?」
戦闘の後、俺はミコトにその事を質問する。アイシャは、遺跡の事なら私に訊け、というような顔をしていたが。神々の造ったものならば彼女の方が詳しそうだ。
「そうだね。かなり特殊な神界の鉱石が使用されているみたいだよ。ただ、それ以上に頑丈な理由として挙げられるのは、使われている石材自体に防御結界が張られているという事だね」
「なるほど。ちょっとやそっとの攻撃じゃ、傷一つ付けられないって事か」
「別にボクたちは、遺跡を破壊しにきたわけじゃないからね。頑丈な造りであれば思わぬ破壊を招かなくて済むし、むしろ良いことなんじゃないのかな?」
なにも破壊したくて言った事ではなかったが、確かに俺の言い方は少し物騒だったかもしれない。アイシャの手前、ミコトの意見は良いフォローだったのではなかろうか。
しかし、そんな彼女のフォローも、アムの一言で全て台無しになってしまう。
「わたしが少し本気を出したら、神鉱石だろうがなんだろうが破壊するのは簡単だけどね」
「アムは、ボクの話をちゃんと聞いていたのかい? ガルフにも言われてるんだし、なるべく無用な破壊は避けるようにしてくれないかな?」
ミコトは、すぐに乱暴な駄天使に対してそう釘を刺す。
もともと敵とも言えるアムは、そんな事を言われても何食わぬ顔だ。
その後も度々出現する凶悪な魔物を倒しながら、俺たちは遺跡の深部へと進んでいく。先に進めば進むほど、魔物のレベルが格段に上がってくのを俺は実感していた。
魔力、反応速度、強靭な肉体から生み出される破壊力。この場所に出現する魔物どもは、そのどれを取ってみても天災級の化物ぞろいだ。
これだけの怪物でありながら遺跡のモブだというのだから、ボスともなればどれ程の強さになるのか想像もつかない。
現実、まだチートの域に達しているとは言い難いアイシャは、殆んど何もできずにお荷物状態となっていた。
「あたいが一体を相手するのに苦戦している間に、何体も瞬殺してしまうにゃんて。ほんとカケル達は尋常じゃない強さにゃね」
移動の最中、唐突にそう呟くアイシャ。鍛え直すため付いていくと言った手前、彼女もこの状況に何か思うところがあるのだろう。
一般的なRPGとかなら同じパーティーである以上、ただ居るだけでも等しく経験値が入るのだろうが現実は厳しい。レベルはやはり、貢献の度合いが大きければ大きいほど上がりやすいようだ。
実際ここまでかなりの数を倒してきた俺は、自身のレベルが大きく上昇しているのを感じていた。




