81.いざ、超古代遺跡へ
よほど隊長を子供扱いした事に感銘を受けたのだろう。警備隊の面々は、次々と俺のもとへやってきて賛辞を送りつつ酒を注いでくる。
状態異常耐性が、酒に関しても効果を発揮しているのだろうか。今世において初めての飲酒だが、どれだけ飲んでも不思議と全く酔いが回ってくる感じはしなかった。
部下たちが俺を構う様子を見て、アイシャは一人面白くなさそうに隅の方で膨れっ面をしている。しかし、彼女もこちらが気になるのか、お互いに何度も目が合っては逸らすを繰り返していた。
族長のガルフとも、ある程度うち解けてきたところで、俺はずっと気になっていた事を彼に質問する。
「ところで実力を示したとはいえ、どうしてそんなに外部の人間に対して寛容なんだ? 遺跡は、あんた達にとって聖地みたいなもんなんだろ?」
「遺跡への挑戦は、マリーザ様のご意志によって外部の者たちにも開かれているのだ。そのため我々は明らかな悪意を持った者でもなければ、それを拒むような事をしていない」
攻略の件に関しては女神マリーザの意志を尊重しているというのは理解できたが、ここまで歓迎ムードな事については全くわからない。
「それにしたって、こんな宴を催してまで歓迎してくれるのは、ちょっと不思議に感じてしまうのだが」
「遺跡の挑戦者が現れる事は、我々にとって吉兆なのだ。それに、樹海という隔絶された土地に住む我々としては、こういった機会は数少ない娯楽をおこなう理由となるのでな」
俺は、そこまで聞いてようやくこの歓迎ぶりの理由を理解する。要は彼らにとって、この機会はまさに祭りそのものなのだ。
部族の者たちからは、特に他意のようなものも感じない事だし、それなら素直にこの宴を楽しませてもらえば良い。
そう考え直した俺は、ようやく彼らにとっての祭りを自分も満喫してやろうという気分になれた。
夜も更けてきて、祭りも終わりに近づいてきた頃。ずっと一人寂しく飲んでいたアイシャが、顔を真っ赤に染めながら俺のもとへとやってくる。
かなり悪酔いしているようで、おぼつかない足取りだったが。彼女は俺の隣にでんと座ると、いきなりくだを巻きはじめた。
「おい、カケル! あたいに恥をかかせてくれた責任を、どう取ってくれるつもりにゃ!」
「どう責任を取るつもりかって、いきなり訊かれてもな。俺が手を抜いて、わざと負けてやれば良かったのか? こっちだって、クリアの条件がよくわからない以上、全力でやるしかないだろ」
俺の考えは論点がずれていたのか、アイシャは激しく怒りだし大声をはりあげる。
「そんなこと言ってないにゃ! あたいは責任を取れと言ってるにゃよ!」
「じゃあ訊くが。具体的にどういう責任の取り方をすれば良いってんだ?」
「せせっ、責任を取るって言ったら、そんなの一つに決まってるにゃ! あたいにそれを言わせるにゃか!」
急に恥じらう様子で、そう叫ぶアイシャ。
いきなりそう決めつけた感じで叫ばれても、俺には何を言っているのかさっぱりからない。
そもそも責任を取れと言うこと自体おかしな話だ。
アイシャの意味不明な絡みに困惑する俺に対し、隣に座っていた部下の一人が小声でぼそっと口を滑らす。
「アイシャさんは要するに、妻にしてくれと言っているのですよ」
耳打ちしたわけではなかったため、酔っぱらいのアイシャにもしっかり聞こえていたようである。部下の一言に対し、彼女は当然の事ながら即座に反応した。
「ちっ、違うにゃーー!! あたいが要求しているのは、族長を除いて部族最強のあたいに恥をかかせたお前が、強い子種を授ける責任を果たせっていうことにゃ! 別にお前の事にゃんか、好きでもなんでもにゃいから勘違いするにゃよ!」
確かに、妻に迎える事と子種だけを残す事では大きな違いがあると言えるかもしれないが。責任を取るという言い方をするならば、むしろ孕ませてしまったイコール結婚するというのが俺たちの世界での考え方だ。あくまでも物の捉え方によってはという話であり、アイシャの部下が言った事と彼女の主張にそれほどの違いはない。
自分で言っていて恥ずかしくなったのか。アイシャは、そう言ったあと半べそ状態で急に立ち上がり、何処かへと走り出してしまう。
「早くもボクのカケルに、変な虫がつきそうな気配がしてきたね」
アイシャと入れ替わるように、俺の隣に座ったミコトがボソッとそう呟く。
いつの間にか自分の物扱いされていた事に関しても納得いかなかったが。それ以上に俺はこの先の修羅場を想像してしまい、異世界ハーレムな状況にだけはならないよう願った。
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