79.獣人たちとの宴①
それにしてもハチャメチャだ。
あんな威力のレーザー光線を、詠唱もなしにたった十秒ほどの溜めで放つなんて。
しかし、もう少しまともな名前を付けられなかったものだろうか。アムビームなんて、安直なネーミングにも程があるだろう。
「やっぱりまだ、この体には慣れないわね。手足を動かすくらい簡単な事なのに、あの程度の光線を出すのに時間かかりすぎたわ」
アムは、たまにムカつく言い方をする奴だが、これに関してはおそらく誇張でもなんでもないだろう。
「遺跡の攻略を進めていくうちに、だんだん慣れてくると思うよ。ガルフにも、あまり派手な技は控えるように言われたわけだし、体を慣らしていくにはちょうど良い場所なんじゃないかな?」
ミコトも本調子でないという話を否定しないあたり、アムの言っている事が誇張ではないのを物語っている。
「それにしても、もう少しマシな技名を付けられなかったのか? アムビームとか安直すぎるだろ」
ようやくその事に関して突っ込んでみたものの、アムの答えは話の流れからして尤もだと思えるものだった。
「あんな只の光線に名前なんてないわよ。一応なんか言っといた方が良いのかと思って、取りあえず叫んでみただけ。テキトーよ、テキトー」
「にしたって俺なら、もうちょっとマシな名前を叫んだと思うぞ。例えばセイクリッドレイオブライトとかな」
「言い方を変えただけで、安直な名前である事に変わりはないじゃない! だいたい技を放つたんびに一々それっぽい名前を言うとか中二病くらいなものよ」
はっきりと言いやがった。そりゃ確かに、そういったものはわりと好きな方だが。他人からそう言われると、かなりムカつく。
アムの心ない言葉に軽くショックを受ける俺だったが、そんな会話を聞いていたミコトは俺たちに対して更に追い討ちをかける。
「二人のやり取りを見てると、まるでコントでもしてるみたいだね」
ミコトの言葉を受け、アムは不本意だとでも言いたげな感じで顔をしかめている。
しかし、そんな事を言われたにも拘らず、俺は今こうして面と向かって彼女と話せている状況を少しだけ嬉しく感じていた。
今晩くらいはゆっくりしていけ、とガルフに言われた俺たちは、彼の家に一晩だけ泊まる事になった。
このあと夕方から、居住地となっている森の中で宴会が開かれる予定だ。
聖地を汚すかもしれない外部の人間に対して、ずいぶんと友好的すぎやしないだろうか。
そうは言っても俺の空気スキルは、彼らに何か他意があるような感覚を告げてはいなかった。
日も沈み、宴の会場には街の人々が続々と集まってくる。
ごく一部の者たちだけによる歓迎会だと思っていたが。街中を挙げての宴会となるようであり、まるでこれから祭りでもおこなわれるかのような雰囲気となっていた。
至る所にかがり火が焚かれ、広場には肉の焼ける匂いが漂いはじめる。
急な宴会であるにも拘らず、いきなりこれ程のものを用意できとは、閉じられた環境に住む者たちにしてはとても豊かだ。
昼間に見た街の様子からもわかるとおり、樹海内に住む民同士で盛んに経済活動がおこなわれているのだろう。
ミコトたちと一緒に勝手にやっていたところ、既に酔いが回り上機嫌な様子のガルフがやってきて俺に酒を勧めてくる。
「カケル殿! こっちにきて一緒に飲まんか」
「まだ、酒が飲める年齢じゃないからな。せっかくの誘いだが遠慮しとく」
「酒を飲むのに年齢など関係があるのか?」
さすがは異世界。いや、この民族特有の考え方なのか。
本気で不思議そうに言うガルフの質問に、俺はどう返して良いかわからず言葉を詰まらせる。
そんな感じで困っている俺に対し、ミコトはさりげなく口を挟んだ。
「付き合いは大事だと思うよ。飲めないわけでもないんだよね?」
確かに、数多の前世において酒を飲まない人生など一度もなかったが。今世においては一応、法律を遵守して生きているつもりだ。
まぁ、ここは異世界なんだから、この場所のしきたりに合わせるべきなのか。
ミコトに諭された俺は、渋々ながらガルフの誘いに乗って、盛り上がりを見せる住民たちのもとへと向かう。
その場所には、侵入者から樹海を守る警備隊の面々もいた。




