71.大樹海の守り人
樹海に出現するモンスターは、魔女の森を闊歩していた魔物どもとは比べ物にならない程の強さだ。
ギカンテス、サイクロプス等の超大型亜人が当たり前のように出現し、中型の魔物でも尋常ではない戦闘力を有するものばかりだった。
因みに亜人とは言っても、例に挙げた巨人どもは人間に対して非常に好戦的であり、強大な魔力を持っているため一般的には魔物として扱われている。
しかし、とんでもない化物どもばかりのはずなのだが、相変わらずミコトが一人であっさりと倒してしまうため、全くその強さを実感する事ができない。
感じる魔力と生命力からしても、もし奴らの一体でも人間の住む所にやってきたら間違いなく災害級の強さである。とはいえ、彼女の圧倒的な力を見慣れてしまうと、そんな化物どもの強さも霞んで見えた。
それにしても本当に巨大な木々である。聞くところによると、ここに生える木の樹齢はどれも万年単位らしい。
森の様子は巨大な木々の陰になって薄暗いが、僅かに漏れだす日の光が幻想的な雰囲気を作り出していた。
「もう少しで守り人たちの勢力範囲に入るね。探索する許可を得るために、一旦彼らの集落に寄ってから遺跡に向かうよ」
「マリーザの手下どもの話? あいつら亜神の手下のくせに、使徒なんか名乗ったりしてほんと生意気なのよね」
予備知識もなく急に飛び出した言葉の数々に、俺は少し困惑する。古代遺跡に向かうとだけ聞いていたわけだが、大まかな流れくらい予め教えておいて欲しいものだ。
「マリーザって言うやつも、ミコトと同じ亜神なのか?」
亜神という呼び方をされたミコトは、少しムッとした表情をする。その様子から察するに、そう呼んでいるのはハーウェ側の存在だけのようだ。
「ずいぶんと古い亜神みたいだよ。まぁ私たちハーウェの天使にとっては、まだまだ子供みたいなものだけどね」
堪らなくなったのか、アムの答えに対しミコトは不機嫌そうに口を開く。
「ボクは、アシェスの眷属だって最初に言ったよね? ボクの事はともかく、この世界の古い神々まで紛い物みたいな呼び方をするのはやめて欲しいものだね。まぁ、マリーザはボク達にとって敵みたいなものだから、そこまで肩を持つつもりもないんだけどさ」
この世界の古い神々といっても、その間にはかなり複雑な関係があるようだ。機会があったら、そういった事情について話を訊いてみるのも面白いかもしれない。
それにしても敵みたいなものだと言うわりに、一々許可を取りにいくなんて律儀すぎるにも程があるだろう。
まぁ、その辺も神々による協定のような、人間たちにはわからない何かがきっとあるに違いない。
その後も巨大な木々の生い茂る樹海を進みながら、ミコトは次々と現れる災害級の魔物どもを一瞬で打ち払っていく。
派手な演出の術を使うのは飽きてしまったのか、仕舞いには光線や光弾などを多用するようになっていた。
巨人族は、この樹海にとっての支配者的なポジションだが、他にも現れる獣型の魔物共もかなり厄介な相手だ。強力な顎と俊敏な動きを持ったものが多く、もはや並みの冒険者などでは完全に太刀打ちできないようなレベルの魔物ばかりだった。
ロールプレイングゲームとかなら、殆んど最終ステージに近いマップの魔物といったところか。
そんな化物どもを一瞬で爆砕していくのだから、神の眷属とはいえミコトの戦闘能力はバグってるとしか言いようがない。
これだけの化物どもが無数に存在する樹海に、人の集落があるなんて全く信じられなかったが。ミコトとアムの二人は、何かを警戒しているかのように急に黙り込んでしまう。
そんな彼女たちの様子を受け、俺も気配感知の能力を広範囲に向ける。
俺の気配感知スキルが察知したものは、30程の人サイズの何かが真っ直ぐこちらに向かってくる様子だった。




