67.目的に向かって
ミコトの家に来てから、既に一週間が経過していた。
何故この場所にいつまでも留まっているのかというと、彼女に帰還する方法について訊ねた事で話が上手い方向に進んだからだ。
その内容はと言うと、彼女がそれに関して俺を手伝ってくれるという話になったことだ。
という事で俺は現在、新たなる相棒となった左腕を使いこなせるようにするために、森のモンスターどもを相手に練習中であった。
三体のオーガに出くわしたが、戦闘は一瞬のうちに終わる。武装モードの義手から放たれる超音速の弾丸は、難なく化物どもの巨体を蹂躙していった。
オーガくらいなら、神の盾の武装を使わずとも倒す事はできるのだが。こいつの凄いところは、魔力の消費を必要とするだけで全くの詠唱要らずなところである。
あとは、あまり得意ではない射撃の腕を上げていくだけだが。連射性にも優れているので、取りあえず急所に当たらずとも見てのとおりの状態だ。
「ふぅ、もう少しスマートにやらなきゃ駄目だよな」
周りの木々も巻き込んだ大きな破壊の痕跡に、我ながらB級映画のワンシーンのようだと感じる。
あまり派手にやらないようミコトから注意されていたが、そのために練習しているのだから今回は仕方がない。
動かない的を使った練習と違い、実戦となるとなかなか上手くはいかないものだ。
「そろそろ戻るか」
アイギスの弾丸は、別空間からオートで装填される仕組みになっており、そこの在庫が無くならない限り弾切れを起こす事はない。しかし、大量の魔力を消費するうえに、それなりに神経も使う。
朝飯を食ってから昼になるまでぶっ通しで訓練していたので、さすがにこれ以上は体の方がもたない。
昼飯時もとうに過ぎており、俺はここで訓練を切り上げミコトの家に帰る事にした。
彼女にあまり家から離れないよう注意されていたが、ずいぶんと遠くまできてしまったようだ。
『ミコトか? 今から帰るつもりだが。少し遠くまできてしまったみたいで、帰るのに一時間くらいはかかりそうだ』
『わかったよ。気をつけて帰ってきてね』
左腕の相棒には通信機能も付いていた。
エリスに渡された指輪は、この森では使用不能だったわけだが。ミコトの作った物に関しては、その限りではないようだ。
まぁ、この森にずっと住んでいるのだから、それに関する研究くらいは当然しているのだろう。
最初はミコトによって、この森の結界が張られていると思っていた。しかし、それに関して訊ねたところ家の周りに展開しているもの以外、彼女は関与していないという話だった。
ミコトは、ある目的をもって大樹海の攻略を進めているらしいのだが。彼女の見解によると、遠くに聳える大樹から結界が展開されているのではないか、という話であった。
更に詳しく訊ねたところ、大樹海には様々なトラップが設置されているようである。そのため、四百年ものあいだ攻略を続けているにも拘わらず、彼女の力をもってしても大樹に近づく事すらまだできていないのが現状らしい。
「ゆっくり攻略していくつもりだったけど、もうその必要もないかもしれないね」
そんな意味深長な事を言っていたミコトだが。俺の目的と彼女の目的に、共通する部分でもあるという話なのだろうか。
四百年ものあいだ攻略を続けるほど大事な目的なのであれば、俺の方を優先するなんて普通はしないだろうし、そもそも協力してくれるなんて話にもならない。
いずれにしろ、そこの部分に関しては詳細を話してはくれないので、一緒に行動を重ねるうちに少しずつ聞き出していくしかないだろう。
ミコトに対して連絡を入れた俺は、彼女に渡された認識阻害機能つきのフェイスマスクを腰掛け鞄から取り出す。
まだ体力はかなり残っていたが腹も減っているし、できるだけ戦闘を避けながら速やかに彼女の元へと帰りたい。
初めて試すアイテムだが、亜神の作った物だけに性能については間違いないはずだ。
そんな事を考えながら、俺は迷わずそのマスクを装着し歩き出す。
相棒の性能も既に実証済みなので、ミコトの作ったものに全く不安を感じることはなかった。




