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厨二で何が悪い! ~前世の記憶が最強すぎて他の召喚者たちがまるで相手にならない。Eランク勇者の俺が世界を救ってみせる~  作者: その辺の双剣使い
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54.裏切り



 活きのいい先方部隊の数百匹が、僕たちのすぐ後ろに迫ってきていた。

 その数だけでも今の体力ではかなり絶望的だが、その後方には更に数千の殺人蜂が続いているのを感じた。

 後ろを振り返ると、木々の隙間からは激しい羽音を周囲に轟かせながら、無数の黒い影が真っ直ぐこちらに向かってくる様子が垣間見える。


~渦巻け地獄の業火よ、巨大な壁となりて敵の行く手を阻め~


爆炎障壁(トイコスフォティア)!」


 僕は、残り少ない魔力を振り絞って、足止めをする為に中級魔法の呪文を唱えた。

 巨大な炎の壁は先頭の数十匹を一気に焼き付くし、なおも激しく燃え続ける。

 最悪、森林火災になったとしても構うもんか。自分の命に変えることはできない。そう思って放った、僕が持つ中級魔法の中でも取って置きの魔法であった。

 これだけの火力を前に、さすがの殺人蜂も無理に突入するのを躊躇っているようだ。炎の壁を突破してくるものはなく、十分な時間稼ぎにはなっている様子だった。


「ナイスだ涼風! そんな魔法が有るんなら、何とか逃げきれそうだな」


 炎の壁が出す轟音に驚いた川口は立ち止まり、こちらを振り返りながらそう叫ぶ。

 そんな余裕をかましてる場合ではないのだが、完全にその表情は緩んでいた。


「今ので殆んど魔力を使い果たしてしまったよ。もう一度同じ魔法を打つのは無理だね」


 僕は、追い抜き様にそう言うと、すぐに前だけを向いて全力で川口のもとから走り去る。

 奴の性格から考えると変に話を長引かせるより、行動で示した方が遥かに有効だ。


「おい、まてよ涼風!」


 思ったとおり、慌てた様子で僕の後を追いかけ始める川口。体力が切れかけているとはいえ、中級の強化魔法を使用している僕よりも基本能力が遥かに高い奴は、あっさりと命の恩人であるはずの僕を追い抜いていった。

 何はともあれ、奴が変にまた踏みとどまって戦おうなんて気を起こさなくて良かった。


 お互い常人離れした身体能力を持っているとはいえ、残された体力も限界に近い。


 くそ! なんてしつこい奴らだなんだ!


 一旦、遠ざかったかに思えた殺人蜂の羽音だったが、再びそれは僕たちのすぐ後ろまで迫ってきていた。

 数千匹の怒れる巨大蜂が轟かせるその羽音は、死を連想されるには十分すぎるものだった。

 おそらく川口の奴も、同じ恐怖にかられているのだろう。見つけたときの威勢とは対称的に、その逃げ足っぷりからは必死さが窺える。

 しかし、奴のスピードは明らかに、強化されている状態とは思えないほど緩慢なものとなっていた。


 僕の方に振り返った川口は、如何にも辛そうな表情を浮かべながら言う。


「おい、涼風! 何とかもう一度、さっきのやつをやれないのか? 光力はまだ少し余裕が有りそうだけと、体力の方がもう限界に近い感じだ」


 だから言わんこっちゃない。一人で突っ走ったりするから、余計に消耗が激しくなってしまったんだ。

 いくら戦闘組の連中が光力で身体を強化するとはいえ、酷使し続けた体の方はかなり限界に近いはず。

 奴の緩慢な動きを見ていれば、その事は明白だ。


 そんな事を考えている間に、殺人蜂どもの先頭を飛ぶ数十匹が僕たちのすぐ後ろまで迫っていた。


「万が一の為の魔力を考えると、もう派手な魔法は使えないよ」

「なら、少しは戦う力が残ってるって事だよな?」


 川口が僕にそう返した瞬間、スキル()()が奴から発せられる僅かな悪意を感じとった。

 その直後、急に立ち止まった川口は完全にこちらに向き直ると、強烈な気を僕の方に向かって放つ。もはや隠す事もなく悪意の塊と化した奴は、下卑た笑みを浮かべていた。


「おい、冗談だろ? 川口!」

「あの女の事は、俺がちゃんと可愛がってやるから心配すんな。恨むんなら、俺の誘いを断らなかった自分を恨むんだな!」


 あの女とは、エリスの事を言ってるのか! やっぱりコイツも彼女に惚れていたってことだ。しかも、その口振りからして、最初から僕の事を何処かのタイミングで始末するつもりだったんだ。


 右腕を前方に突き出した川口の手のひらから、眩いばかりの光球が生み出される。


「爆裂光弾!」


 射出された光の玉は僕の左腕をかすめ、殺人蜂の先方が飛ぶすぐ下の地面付近で炸裂する。


 激しい轟音と共に、一瞬だけすっ飛んでしまう僕の意識。体を吹き飛ばされたという自覚こそなかったが、気づいたときには地面に倒れ伏している状態だった。

 キーンという耳鳴りが落ち着き始めた頃には、爆発による煙も次第に消えつつあった。

 周りを見渡してみても、既に川口の姿は何処にも見当たらない。


 一人、取り残されてしまった状況に絶望する僕だったが。それと同時に自身の左側に、冷たい感触と強烈な違和感を覚える。

 まさかそんな……。

 最悪の事態を覚悟しつつも、僕は恐る恐る視線を自身の胸元に移した。

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