43.エリスとの初デート④
「冒険者が職業として存在するって事は、それを束ねるギルドみたいな組織なんかも有ったりするのかな?」
もし、ギルドのようなものが有るとすれば、これだけ巨大な街に存在していないはずもない。
それほど遠くというわけでもなければ、街を散策するついでに是非とも様子を見にいってみたいものだ。
「ええ、ギルドなら当然あるわよ。レムール大陸の中で一番大きな国家の帝都だけに、この大陸のギルド本部はここに置かれているわ」
僕の予想はやはり当たっていた。しかも、この街にあるのは支部ではなく本部なのか。という事は相当立派な施設であるに違いない。
是非とも一度どんなものなのか、この目で見てみたい。そう思った僕は、エリスに対しお願いしてみる事にした。
「本部って事は、相当大きな建物だったりするんだろうね? そんなに遠くじゃなかったら、どんなもんか一回でいいから見にいってみたいな」
「う~ん、あの界隈は柄の悪い連中が多いから、護衛もなしに近づくのはあまりお勧めできないわね」
僕の提案に対し即座に答えるエリス。
確かに彼女の言うとおり、トラブルを回避するためにわざわざ変装までしているのだから、ゴロツキなんかに絡まれでもしたら全く意味のなかった事になってしまう。
今回は彼女の意見を尊重して、素直に従った方が良いのか。そう半分、諦めかけたときだった。
「でも、カケルがどうしても見てみたいって言うなら、絡まれないように注意しながら少しだけ見学しにいってみましょうか?」
エリスは、僕の気持ちを優先してくれた。
何かあっては悪いとは思いつつも、僕は彼女の申し出を受けギルド本部の見学にいく事を決めた。
「ごめんねエリス。無理を言って」
「いいのよ、まだ時間は沢山あるしね。それに万が一何か有ったとしても、わたし達は他の誰よりも強いわ。もし絡まれたとしても、ぶっ飛ばして街の衛兵にでも引き渡してしまえば良いのよ」
普段、僕に対してはデレデレのエリスだが、やはり彼女は豪胆な女である。本当に頼りがいのあるカノジョだ。
ギルド本部は、この先の繁華街を抜けた所にあるらしい。
普通に歩いていくと30分以上かかるようだったが。二人して街をぶらつくのも楽しいという話になり、エリスは僕に対し魔道具を使って御者に連絡を取ることを告げた。
「アゥート・ハリス」
エリスが右手に嵌めた指輪に向かってそう唱えると、彼女の手元から駅で一旦別れた御者の声が響いてくる。
御者の男に対して迎えの時間と場所を指定し直した彼女は、満面の笑みを浮かべながら僕の手を引き「さぁ行きましょ!」と言って元気よく歩き始めた。
けっきょく彼女も、僕が一緒なら何処が目的地であろうと嬉しいようだ。
「そんな便利な物があったんだね」
「ごめんカケル……もっと早く渡す事ができれば良かったんだけど。あなたには特別な仕様の物を渡すつもりだったから、準備するのに昨日までかかってしまったの。もう作り終えているから、屋敷に帰ったらすぐに渡すわね」
口ぶりからして、エリスは魔道具の製作まで出来るという事なのか。もしそうなら、本当に彼女は完璧超人だ。
「ひょっとして、それってエリスが作ったの?」
「そうよ。でも作り方は昔、あなたから教えてもらったんだけどね」
遠く離れた人間と連絡を取ろうなんて概念が、その当時の僕に有ったんだろうか。今の時代なら携帯端末を持ち歩くのは当たり前のことだが、江戸時代の人間にそんな発想が浮かぶとは到底思えない。
まぁ、彼女がそう言うのなら、間違いではないのだろうが。きっと二人で旅をしていた時に、何か必要に迫られるような事でも起きたのかもしれない。
帝都の中で一番賑やかな繁華街に入った僕たちは、途中いくつかの店に立ち寄りながらギルド本部を目指していく。
本部の建物はスラム街に近い場所にあり、そこはこの繁華街の外れの方にあるようだ。
昼食はまだ済んでいなかったが、ちょこちょこと食べ歩きをしていたせいでそれなりにお腹はいっぱいである。
一応エリスにも、何処かでちゃんと昼食を取るかどうか訊ねてみたが。彼女もお腹がいっぱいらしく、けっきょく僕たちはそのまま目的の場所へと向かう事にした。




