41.エリスとの初デート②
列車を待つホームには、人々が思い思いの場所で適当な感じに待っている光景が広がっていた。
列を作って待つという文化は、僕らの世界特有のものなのかもしれない。いや、僕らの世界でも国によってはそんなもんだったりするのか。
ホームに電車? こちらの世界では魔道列車(列車)というらしい。が到着すると、出てくる人も待たず利用客たちは自由な感じで乗り込んでいく。出入りする人の肩がぶつかり合っても、お互いお構い無しな感じだ。
エリスもこんな状況には慣れていないようで、少し困惑している様子だ。
別に満員という程の混雑ぶりではなかったので、僕は彼女の手をしっかりと握りしめその場にとどまった。
人の流れが落ち着いたところで、ようやく僕たちは列車に乗り込もうと動き出す。賢い人間は、みな同じようにしているようだった。
車内を見渡すと座席は殆んど埋まっていたが、全体としてはわりとすいていて、人と人が密着するような状態ではなかった。
列車に乗り込むなり壁際の端に寄ったエリスは、上目使いで僕を見つめながら腰に手を回しベッタリと張り付いてくる。
あっちの世界でもたまに見る、バカップルの完成だ。
彼女の身長はけっこう高い方だが、僕も一応170センチ台の半ばはある。おかげで傍から見ても、少しは様になっているのではなかろうか。
陰キャのくせに、それだけ身長があるならまだ勝ち組の方じゃないかって? 消極的な性格かどうかは、別に身長の高い低いだけで決まるわけじゃない。
これもまた、魔法の力を使っているのだろうか。しばらくすると、ドアが閉まるというアナウンスが車内に流れる。内装がレトロな雰囲気である事を除けば、向こうの世界とまるで一緒だ。
ただ、定刻どおり運行するという概念に関しては、かなり緩いようである。列車は、出発予定時刻を数分過ぎてようやく動き出した。
「隣の車両なら、座れそうな席が有りそうだよ?」
「別にたったままで良いわ。どうせ次の駅で降りるんだもの」
立ったままイチャついてるのも目立つし、恥ずかしいと思った僕はそうエリスに提案する。しかし、彼女がそう返事し終える頃には目的の駅に到着する寸前であった。
正直な話エリスの屋敷から百貨店までは、歩いても行ける程の距離だった。単に僕が列車に乗ってみたいという希望を叶えるため、わざわざ鉄道を利用したという話である。
停車する態勢に入った列車は、次第に速度を落としていく。加速や減速の感じ、乗り心地に関しては向こうの世界の電車と同じようなものだ。
こんなもんなら、わざわざ列車を利用するまでもなかったかもしれない。
まぁ、乗り方を覚える事ができたのだから、それに関しては良かったと言うことにしておこう。
百貨店のある駅はそれなりに大きかったが、経済が衰退し始めているせいか最初の駅ほど利用客は多くなかった。
目的地までの道のりも落ち着いた雰囲気であり、行き交う人々もまばらである。
数分歩いてたどり着いた巨大な店舗の正面入口の前には、立派な鷲のような彫像が二体たっている。それは、いわゆるグリフォンというやつのように見えた。
店舗の中に入ると客は少なく、店員たちも何処となくやる気がないように見受けられた。
僕たちは、エレベーターを使って三階にある衣料品売り場に向かう。
やはりエレベーターも近世の物のような感じだが、動力が魔法によるものだという事実がいまだに信じられない。
向こうの世界と一緒で、高級百貨店らしくエレベーターガールは居るのだが。あくまでもボタン押しにすぎず、動作自体は機械的な部分が大半を占めているようだ。
目的の売り場に着いた僕たちは、さっそく旅に必要な服を物色し始める。他の売り場の店員とは違い、衣料品売り場の店員はかなり積極的な感じであった。
「どんな服をお探しでしょうか?」
「パーティー戦闘をするために着ていく、丈夫な服を探している」
エリスの答えを聞いて、困惑した様子になる女性店員。それなりに身なりの良い格好をしていた為、横柄な態度になったという程ではなかったが。彼女は明らかに、場違いな客が来店した、というような雰囲気に変わった。
そんな店員の様子にも構わず、服を選び続けるエリス。変に接客されるよりかは、却ってこの方が気楽で良いのかもしれない。
「カケル。このレザージャケットなんかどうかしら?」
エリスは、少し色合いが派手めの、装飾がゴテゴテに付いたジャケットを手に取り僕に提案してくる。
「うん、もう少し落ち着いた感じの物が良いかな?」
「うふふ、昔から派手な格好をするの好きじゃなかったものね。転生しても、やっぱり貴方は昔のままだわ」
そんな不思議な会話に、店員はますます困惑した表情となる。
しかし、エリスが値札も見ずに選ぶ様子を見て、僕たちが上客であると判断したようだ。
「丈夫さを重視されるのでしたら、こちらの商品などいかがでしょうか?」
再び積極的になる店員。
わりと落ち着いた感じの黒いスーツを勧められたが、なかなか僕のイメージに合ったチョイスだといえた。
「悪くはないわね。カケルが気に入ったのなら、試着してみたらどうかしら?」
エリスも否定的な意見ではないようなので、僕は店員に対し試着したい旨を伝える。
黒いレザースーツの上下を手に持った女性店員は、満面の笑みで僕を試着室へと誘った。




