4.能力測定
大聖堂を出た僕は、外の様子に思わず感嘆の声をあげた。
帝都の街並みは中世というより、近世ヨーロッパの大都市に近い雰囲気だ。
移動手段はもっぱら馬車のようであるが、市街には鉄道のような物まで走っている。
魔物が大量発生しているせいで、経済が危機的状況に陥っているとはとても思えないほど街の様子は賑わっていた。
「ずいぶんと発展した都市なんですね」
天近が、教皇に対してそう問いかける。すっかりクラスの纏め役きどりだ。
まぁ、この中で冷静さを欠いていないのは、自分以外では天近くらいなので適任といえるのかもしれない。
「私が任命した、皇帝の住む都ですからね。人口も二百万人を超えますし、他の諸王国の王都とは比べ物にならないくらい、発展した都市ですよ」
「皇帝は、あなたが任命してなるものなんですか?」
「はい。殆どの場合、世襲制ですが。代替わりの際は一応、私が任命する事によって、正式に就任する形になっております」
天近との会話から、教皇がこの世界において強い影響力を持っている事が窺えた。
しかし、教皇庁みたいな所が別に有ったりはしないのだろうか。
そんな疑問を感じつつも、僕たちは用意されていた馬車に四人一組で次々と乗り込んでいく。
特定のグループに所属していない僕は、必然的に同じような境遇の三人と同乗する事になった。
「自分たちこれから、どうなっちゃうんですかね? まさかこんな事が現実に起こるなんて……」
馬車が走り出して早々、クラスではどちらかと言うと影の薄い白岡満が誰にともなくそう問いかける。普段の彼からしては珍しく、何処と無く浮かれた様子だ。
一々、反応するのも煩わしいと思ったのだろう。僕もそうだったが、他の二人も特に彼の言葉に対して反応を示すような事はなかった。
大聖堂前の広場を出発して10分くらいで、宮殿のある敷地内に到着する。ここからは、歩いて宮殿まで向かう事になるようだ。
少し状況に慣れてきたのもあるのだろう。豪華絢爛な西洋風の宮殿建物が立ち並ぶ様子に、一部の女子たちがまるで修学旅行にでも来たかのようにはしゃぎだす。
それから20分ほど歩いて、僕たちはついに皇帝が待つ本殿に到着した。
皇帝との謁見は、意外とあっさり終わる。お互いに自己紹介をしあっただけで終わった感じだ。因みに皇帝の名は、シャルール二世といった。
その後すぐにこの世界についての事を知るため、説明会のようなものが会議室に移動しておこなわれる。
説明会の席において、僕たちの能力値について触れられるが。能力の測定については翌日おこなわれる事となり、夜は豪華な宴席が設けられ、この日は終わりを迎える事になった。
前日に説明されていたとおり、宮殿内にある広間に集められた僕たちは、これから各々の能力を確認させられるところであった。
広間の中央には、台座に置かれた大きな水晶が鎮座している。
どうやら、その前に立った状態で宮廷魔術師が呪文を唱える事で測定ができるようだ。
まずは天近が率先して、能力の測定にはいるため水晶の前に立つ。そんな彼の様子を、クラスメイトたちは固唾を飲んで見守っていた。
初老の魔術師が呪文を唱えると、水晶と天近の体からは眩いばかりの光が溢れだす。
光が収まると、水晶の前には見事な装飾の施された長剣が出現していた。
「ステータスオープンと言ってみてください」
宮廷魔術師の老人にそう言われ、躊躇う様子の天近だったが。彼は、少し気恥ずかしそうに「ステータスオープン」と言葉を発した。
すると、彼の前方には薄い緑色に光る半透明のパネルが出現する。その光景は、まるでゲームなんかによくある感じのものに見えた。
当然そこには能力の表示がなされていると思われるが、それを覗き込んだ魔術師から感嘆の声があがる。
「おおっ! これは凄い! 使徒ランクがSSなうえに、全ての能力値が100を超えておる! 職業も剣聖とは大当たりじゃな!」
魔術師の叫び声に呼応して、立ち会いをしていた皇帝も天近のステータス表示を覗き込む。
「確かにこれは凄い! 伝承にあった過去の召喚者でも、初期値がこれほど優れた者など存在しなかっただろう」
皇帝があげた感嘆の声を聞いて、クラスメイトたちも次々とステータス表示を覗き込みにいった。
そんな天近のステータスは次のとおりである。
名前 天近 大地 年齢 17歳
天職 剣聖
使徒ランクSS
天啓レベル1
腕力 118
耐久 107
敏捷 117
体力 121
生命値 12/12
光力 100
光力操作 50
アクティブスキル
光爆覇レベル1 神の息吹きレベル1 舞空レベル1
防御結界レベル1 空間結界レベル1
パッシブスキル
全状態異常耐性レベル1 全属性耐性レベル1
光力変換100%
天近のステータスを見て、クラスメイト達は先を争うように自身の能力測定に名乗りをあげ始める。
その様子はまさに、この理不尽な状況を忘れてしまっているかのようでさえあった。




