3.異世界召喚
視界を取り戻した僕の目に飛び込んできたのは、よく有りがちな大聖堂のような場所の広間に、外の光が差し込んでいる光景だった。
一緒に転移してきた15人のクラスメイト達も、僕と同様に広間の中央に踞っていた。
恐らく、ハーウェという神を信仰する宗教の教皇か何かなのだろう。お約束どおりそんな僕たちに対して、豪奢な衣装を纏った初老の男は感嘆の声をあげる。
「おおっ! 召喚の儀式は見事に成功した! これで世界は、救われる事になるでしょう!」
豪奢な衣装の男がそう叫ぶと同時に、僕たちの周りを囲んでいた大勢の司祭風の男達からも、一斉に歓喜する声が巻き起こった。
クラスメイト達も当然、僕と同じく天使と会っているはずなのだが。あの強引さからも察しがつくとおり、目まぐるしい状況の変化にみな明らかに困惑している様子だ。
「ようこそ参られました、ハーウェにより選ばれし使徒の皆さま方。ここは、アッシュリアという名の世界です。皆さま方にはこれから、その大いなる力をもって、人類の存亡をかけた戦いに身を投じていただく事になります」
豪奢な衣装の男が発した一方的な言葉に、川口興記が乱暴な口調でわめきだす。
「おい! 何の冗談だよこれ! フザけんのも大概にしろや!」
川口の叫び声を皮切りに、クラスの女子たち数人が堰を切ったように泣き叫び始める。
完全に収拾がつかない状況となってしまい、困惑する様子の教皇と思われる男だったが。彼が次の話を始める前に、天近大地がクラスメイトたちに向かって大きな声で言葉をかけた。
「みんな、まずは少し落ち着こう! ただ泣いていたって仕方がないじゃないか! まずは相手の話を聞いてみて、状況を把握してから今後どうするのかを皆で話し合おう」
天近の発言を受け、パニックを起こしていたクラスメイト達は少し落ち着きを取り戻す。
いいところを取られてしまった川口は、面白くなさそうな様子で「チッ」と舌打ちをしていた。
兎に角まずは、自分たちの置かれた状況を把握しなければならない。そう皆の思いが纏まった雰囲気となったところで、教皇らしき男からこの件に関する説明がおこなわれる。
「自己紹介が遅れました。私は、ハーウェ聖教会の教皇、カイハンス三世と申します」
やはり豪奢な衣装を纏った男は、予想していたとおり教皇という事で合っていた。
それにしても不思議だ。天使と融合しているせいなのか。僕は、異世界人の言葉を自然と理解する事ができていた。
他のクラスメイト達も、その事に対して誰もつっこまないところをみると、恐らく異世界人の言葉を理解しているのだろう。
教皇の説明によると、アッシュリアの世界に闇の帝王を名乗る男が突然現れて以来、各地で強力な魔物が大量発生するようになってしまったらしい。
そのせいで流通は滞り、各国との交易が分断され、世界の経済は危機的状況に陥っているようだ。
世界中の国が協力し、大規模な討伐軍が何度も編成されたようだが。その度に連合軍は敗北しており、今では各都市や村々を結界で囲い、防衛に徹している状況なのだそうだ。
このままではジリ貧になっていくのは確実であるため、困り果てた各国の王たちはハーウェ聖教会に依頼する事にしたというわけである。
まぁ、その後はお察しのとおりだ。
各国の王から依頼を受けた教皇が、神に祈りを捧げたところ、神託が下りてきて僕たちの召喚に至ったという話である。
要するに僕たちは、その闇の帝王とやらを討伐する目的で召喚されたわけだが。問題は、元の世界に戻る方法が有るのかどうかである。
当然、天近がその事に関して、皆の気持ちを代弁するかのように質問したのだが。教皇の答えは「目的を果たした際には、再び戻る方法についての神託が下りるはず」であった。
なんだか釈然としない答えではあったが、このまま立ち止まっていても前に進む事はできない。
天近も、同じような事をクラスメイト達に諭して、全員の気持ちはなんとか纏まったようだ。
それから僕たちは、皇帝との謁見と、状況についての更なる詳しい説明がおこなわれるという話を受ける。
すぐに場所を移すという話だったので、僕たちは言われるがままに宮殿へと移動を始める事になった。




