36.川口の真意
「草加の奴にはフラれちまってな。それに俺は、最初から仲良しパーティーを組むつもりなんてなかったんだ」
あぶれてしまった事を、素直に認められないだけのようにも感じられるが。確かに奴の性格からすると、あながち嘘とも言いきれない。
天近に対して異常なまでの対抗心を持っているような奴だ。個人の能力で敵わない分チームで勝とうと考えてるのかもしれない。
そうなると僕は、それなりに戦力として見られているという事か。
少しだけ嬉しいと感じる反面、正直なところ偉い迷惑な話でもある。しかも、何となくだがこいつ、エリスの事を気に入っている節がある。
僕に近づきたい理由は、そういった事も目的としてありそうだ。
「そうなんだ……それで川口くんは、この五人がベストなメンバーだと考えてるわけ?」
「ああ、お前の能力が未知数だけどな。バランスとか考えたら、ベストなメンバーだと思うぜ。どうだ? 変にあいつらと取り合いとかもしたくないし、せっかく上手いこと良いメンバーが揃ってるわけだから、これで確定って事で良くないか?」
変に僕の事を持ち上げない辺り、確かにちゃんと考えて出した結論のようでもある。もう少し細かい分析も欲しかったが、僕が考えても確かにバランスとしては良いメンバーだと言えた。
「でも、僕たちの意見が通るかどうかは、確定じゃないんだよね?」
「まぁ、そうなんだけどな。だけどもし帝国側が選定をするっていう話になったとしても、天近の奴が口出ししそうじゃないか? そうなると結局、俺たちの意見が通りそうな気もするけどな」
確かに言われてみれば、そのとおりかもしれない。御前試合の時でさえ、皇帝は川口の立候補に対して何も言わなかった。
こちらの意見が通りそうなのはわかったが、問題なのは僕の意思の方である。正直な話し川口みたいな狡猾で自己中な奴とは、上手くやっていけそうな気がしない。
お互い全力で戦ったからといって、友情が芽生える、なんて展開には到底なりそうもない相手だ。
エリスの事もそうだが、今回コイツがあの件を根に持っている様子を見せないのは、他にも何か裏があるからに違いない。
少し考えさせて欲しい。そう僕が言おうとした瞬間、普段おとなしい日高さんが、珍しく僕たちの会話に口を挟む。
「涼風くんと一緒なら、私も安心できるよ。武道の経験が有るからなのかわからないけど、涼風くんって凄く戦いなれているみたいだしね。なんだかんだ言って涼風くんが居れば、一番安心できるパーティーかもって思えるの」
「そうそう! エリスちゃんも言ってたけど。お前って能力値に表れないだけで、いろいろピンチとかなっても何かと救ってくれそうだしな」
日高さんの意見に対し、川口は畳み掛けるよに彼女の言葉を後押しする。
そこまで言われてしまっては、非常に断りにくい雰囲気となってしまった。
実際に僕が乗り気ではない理由は、川口と戸田のコンビが嫌なだけであり、日高さんと本庄さんの二人が嫌なわけではないのだ。
僕は、なんとか断る理由を見つけたくて、すがるように本庄さんの方に目を向ける。
しかし、彼女の意見もそれほど否定的なものではなかった。
「あたしも、ミノりんと同じ意見だな。川口と戸田の二人が一緒ってのはちょっとアレな感じだけど、まぁ涼風が居るなら安心はできるかな?」
「アレな感じってなんだよ本庄! まぁ、いいけどさ。で、涼風はどう思うんだよ?」
川口に答えを求められてしまったが、本庄さんも譲歩するような感じで言ってしまっては余計に断りにくい。
期待するような日高さんの表情も相まって、僕はこの場で決断するしかなかった。
「取りあえず内々でって事なら僕もOKだよ。確かにある程度は先に決めておいた方が、そういう状況になったときにスムーズだろうからね」
僕は、そう心にもない事を言って取りあえず同調してみせる。
「そんじゃ、一応それで決まりだな」
川口は、安堵した様子で強引に話を纏める。
日高さんは、すごく嬉しそうだ。
終始無言だった戸田は、僕の答えを聞いて何故か薄ら笑いを浮かべていた。
嫌な予感しかしないものの、断る理由が好き嫌いでしかない以上、承諾するより他ない。あとは運を天に任せるまでだ。
選定方法は、どうにか抽選などにならないだろうか。皇帝を待つ間、終始そんなことを願う僕だったが。
ようやくやってきた皇帝が最初にかけた言葉によって、僕の望みは脆くも打ち砕かれてしまった。




