33.パーティー編制
急遽、御前試合となってしまったステータスの発表会から、更に10日程の時が流れていた。
エリスとの特訓による成果は着実に上がってきており、僕は中級魔法を混合した強化魔法まで、余裕に操る事ができるようになっていた。
中級の強化魔法であれば、強化される数値は40~60と言われている。
他の召喚者たちには、まだ能力的に届かないだろうが。それだけ強化する事ができれば、後は数多の前世で培った経験と技量で補っていくまでだ。
魔法を扱うこと自体も、かなり慣れてきた。今では複数の中級魔法を同時に使用しても、全く魔力酔いを起こす事はない。
おかげで魔法を重ねがけするまでもなく、攻撃魔法の威力は格段に上がり、戦いのバリエーションは圧倒的に広がった。
因みに後になって聞いた話だが、複数の魔法を同時に扱う事ができる者など、この世界には殆んど存在していないらしい。
何の疑問も持たず普通におこなっていたが、実はかなり物凄い事をしていたようだ。
そんなこんなで、ここまで着実に実力を伸ばしてきたわけだが、その成果を見せる時は間近に迫っていた。
数日内にフィールドに出て、魔物を相手にした訓練を実施する予定となっているのだが。それに当たって今日は宮殿に向かい、パーティー編制をおこなうという話になっていた。
という事で現在僕は時間になるまでの間、図書室で勉強しながら待機しているわけだが。エリスは今日、大事な会議があるらしく、いつ終わるかも分からないという話だった。
そんな僕のところに、図書室に入ってきた日高さんと本庄さんの二人が声をかける。
「涼風くん、久しぶりね」
「やぁ、涼風! 今日はエリスさん、会議らしいじゃないか」
実はあの時以来、クラスメイト達とは一切顔を合わせる事がなかった。
御前試合の後、クラスの連中から冷たい視線を向けられていたように感じていたが。意外にもこの二人は、僕を避けるような態度を取る様子はみせない。
「うん、よく知ってるね。エリスは確かに今日、大事な会議があって遅くなるらしいよ。最近かぶる事が全然なかったけど、二人とも今日は訓練の代わりに勉強なのかな?」
僕の質問に対し、二人は何故か一瞬だけ顔を見合わせる。
迂闊だった。つい、いつもの調子で「エリス」と呼び捨てにしてしまった。恐らくそのせいで、二人に対し違和感を持たせてしまったのだろう。
「う、うん……そうだよ。私たちも涼風くんみたいに、能力が足りない分を魔法で補えるようになりたくてね」
「そうそう! それにしても涼風お前、ずいぶんと雰囲気が変わったよな?」
日高さんが答えた後で、本庄さんもそんな事を言ってくる。
確かに指摘されたとおり、僕は雰囲気が少し変わったのかもしれない。
エリスと接していくなかで、女性に対する耐性はかなり上がっていたようだ。
以前なら女子二人を前に、もっとしどろもどろになっていたはずだ。
しかし、今の僕は同年代の女性を前にしても、それほど緊張しなくなっていた。
「そうかな? でも確かに、川口くんにも勝つ事ができて、少しは自分に対して自信を持てるようになったのかもしれないね」
エリスの件を勘ぐられては不味いと思い、僕は敢えて否定せずにそう言ってみせる。二人の反応は微妙なものだったが、取りあえず彼女たちがそれ以上エリスとの事に関して追及してくる事はなかった。
その後、情報交換など交えながら談笑をしていたが。時間となったため、僕たちは三人で一緒にパーティー選別をおこなう会場に移動を始めた。
こんなところをもしエリスに見られでもしたら、彼女はまた相当に機嫌を損ねるだろう。
別に悪い事をしているわけではなかったが。彼女の異常なまでの独占欲を考えると、ひょっとしたら何処かで見られているのではないかと気が気ではなかった。
「涼風ってさー。エリスさんに、めちゃめちゃ可愛がってもらってるみたいだな」
あと少しで会場に到着するというところで、本庄さんが唐突にそんな事を言い出す。
彼女としては別に特別な意味などなかったのだろうが、僕はやはりエリスとの関係が噂になっているのではないかと思い正直かなり焦った。
「どどっ、どうしてそんな風に思うの?」
「なんだよ、急にそんな慌てちゃってさ。あの人を見てると『私のお気に入りの弟子に近づかないで!』って感じがスゲーするからさー」
探りを入れているのか。それとも、本気でそう思っているのか。本庄さんは、そう言いながら僕の反応に対し怪訝な顔を向けた。
どう誤解を解く……いや、実際は誤解などではないのだが。上手い返しが思い付かないままに、僕たちはパーティーの選別会場に到着してしまった。
やはりご新規入場者さんがあまりにも少なすぎるため、サブタイトルを追加いたしました。




