24.魔力酔い
気づくと、そこは真っ白な空間だった。といっても、例のアレである。アムがまた、意識の世界に招待したという状況だ。
いつものように、アムは微笑みながら僕の前に佇んでいる。
毎回、寝ている間や、意識を失った時に会いにきてくれるのは嬉しいが。果たして、そんなに頻繁に面と向かって対話する必要があるのだろうか。
そんな風に考えていたら、僕の気持ちを読み取ったであろうアムは、その事についてツッコミ始める。
「なによ~! こうして会いにきてあげてる事が、ありがた迷惑だとでも言うのー? 普段、口を出したりすると嫌がるから、気を遣ってあげてるんじゃない!」
「まぁ確かに、人と話してる最中にあれこれ口出しされるより、こうして改めてもらった方が助かるけどな。で、今回は何の用なんだ?」
僕は、相変わらずアムに対して尊大な態度で応じる。
頭では、天使に対する態度としては有り得ない事だとわかっているのだが。どう意識しようとも、不思議と自然にそうなってしまうのだ。
太古における超越者としての記憶が、彼女を完全なる格下と見てしまっているのがその理由なのかもしれない。
しかし、おぼろげな記憶だけ有ってもかつての力をふるう事ができないのであれば、虚勢を張るにも程があるといったところだ。
そんな感じであるにも拘わらず、アムの方も特に怒る様子を見せないところがまた不思議ではあるが。
まぁ、そこは僕の事を中二病だと勘違いしている事で、彼女としては痛い子の発言は許してやろう的な感覚なのかもしれない。
「相変わらず態度がデカイわね! まぁ、それは別に良いんだけど。一応、伝えておこうと思った事があるから、またここに招待したのよ」
「伝えたい事? 何なんだよいったい」
「儀式の後、エリスちゃんも言っていたけど。シンジュウロウだったときの契約は、今でも有効みたいね。魂の状態を覗いてみたら、全属性の上級まで契約されている状態だったわよ。それだけじゃなく、古代魔法までけっこうな数の契約を済ませてたみたい」
アムがそう言うのなら、契約状態に関してはそれで確定という事でよいだろう。それにしても、これってかなり凄い事なんじゃないのか? 聖や闇の属性よりもレアだと言われている古代魔法まで、複数の契約をしているなんて正直自分でも驚いた。
いや、逆に考えれば慎十郎だったときに、そこまでしなければ他の召喚者たちと肩を並べる事ができなかったのかもしれない。
それにしたって、これだけの適正があるというのは、それだけでも十分に凄い事なんだろうが。
「それで、どうして俺は気を失ってしまったんだ?」
「それについては、エリスちゃんから説明があるんじゃない? まぁ、端的に言うと魔力酔いってやつね」
なるほど。詳細についてはわからないが、使い慣れない魔法を使った事が影響したとでもいったところか。
契約状態の件を伝えたかっただけのようで、アムは「じゃ、この後ゆっくり楽しんでね」と意味深長な事を言って姿を消してしまう。
それと同時に空間は薄れていき、僕は再び意識を取り戻した。
柔らかい感触が僕の頬に伝わる。
瞼を開くと、心配そうに僕を見つめるエリスの顔が目に映った。
僕が意識を取り戻したと気づいた彼女の表情は、微笑みへと変わる。
「良かったカケル。気が付いたみたいね」
優しく僕の頬を撫でながら、そう声をかけるエリス。柔らかい感触の正体は、彼女の膝枕によるものだった。
先ほどの場所から移動もしておらず。状況から察して、それ程ながく意識を失っていたわけではないようだ。
「僕は、いったい……」
理由は概ねわかっていたものの、僕は白々しくそう言いかけてエリスの説明を促す。
「ごめんなさい、昔の感覚でいたから失念していたわ。いくら魂が同じだからって、能力まで引き継いでいる訳じゃないものね。魔力が枯渇すると、こういう状態になるから気をつけてって、ちゃんと注意しておかなきゃいけなかったのに……」
召喚者のステータス表示を見た限り、魔力の項目はなかったはずだ。しかし、彼女の口ぶりからして可視化されていないだけで、召喚者にも魔力は存在しているのだろうか。
召喚者の能力について疑問に感じた僕は、これからの事も考えると、その辺に関してしっかり認識しておくべきだと思う。
もう少しこの感触を味わっていたかったが、僕は全身の倦怠感を覚えながらも起きあがろうと努めた。




