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厨二で何が悪い! ~前世の記憶が最強すぎて他の召喚者たちがまるで相手にならない。Eランク勇者の俺が世界を救ってみせる~  作者: その辺の双剣使い
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19.司書の女②



「お前たち。戦闘訓練をサボって、こんな所で何をしている」


 僕の背後から、冷淡な口調でそう声がかけられる。その声は、明らかにエリスのものだった。

 正当な理由があるのだから、すぐにそれを説明すれば良いだけなのだが。何故か二人は、まるで蛇に睨まれた蛙のように固まってしまっていた。


 更に増していく殺気。堪らず僕は、二人に代わって説明しようと恐る恐る振り返る。すると、そこにはエリスだけでなく数冊の本を抱えたドレミの姿もあった。


「二人は、僕と一緒で今日は魔法の勉強をする予定らしいんだ。司書さんが見当たらないようだったから、ちょっとお互いに情報交換をしていたところ」


 チラッと彼女たちに目をやると、二人は表情を強ばらせたまま何度も黙って頷いていた。

 超絶美女が台無しになるくらい、鬼の形相をしていたエリスだったが。僕の説明を受けた彼女は、少し表情を和らげながら言う。


「そうか。待たせたようで済まなかったな。こちらの用事は済んだから、ドレミの事は好きに使ってくれ」


 エリスがそう言うと、ドレミは二人に向かって「それでは、目的の本を探しにまいりましょうか」と言って、抱えていた本をテーブルの上に置く。


「それじゃあな、涼風。また今度な。ドレミさん、お願いします」


 本庄さんは、すぐに立ち上がり僕にそう挨拶をすると、日高さんの手を引きそそくさと立ち去ってしまう。

 別に仲間同士、一緒に勉強したって良さそうなものだが。エリスの恐ろしい雰囲気が、彼女にその言葉を言わせなかったのは明らかだ。


 この様子だと、うっかりドレミの話をしようものなら、後でどんな目に遭うかもわからない。

 ミステリアスな司書の情報は気になったが、僕はエリスに対して彼女の質問をする事は控えようと思った。


 横にあった椅子をピタリと密着させたエリスは、そこに座るとじっと僕を見つめながら言う。


「カケル! 今度わたし以外の女と楽しそうに話なんてしてたら、絶対に許さないんだから!」


 そう言うなり彼女は、大胆にも僕の胸に顔を埋めてきた。


 こんなところを誰かに見られようものなら、言い訳のしようもない。

 後でクラスメイトたちに冷やかされるのは、まぁ良いとして。宮廷内で噂にでもなったら、彼女の立場も危うくなってしまうだろう。


 そんな僕の心配をよそに、エリスはデレ続ける。悪い気はしないが、ちょっといい加減にして欲しいものだ。


「今夜からは一目を気にせず、存分に甘える事ができるのね」


 ようやく僕から離れたエリスは、悪戯な笑みを浮かべながらじっと僕の事を見つめ続ける。

 今にも襲われてしまいそうな雰囲気であったが、流石にそこまでは自制したのか。彼女は取り繕うように、テーブルの上に置かれた本のページをめくり始めた。


 エリスが本を手にとってから、今さら気づいたのだが。魔法の勉強をすると言っても、異世界人である僕たちはこの世界の文字など読む事ができない。したがって、まずは文字の学習から始めないと先には進めない。


 そんな僕の心配をよそに、エリスは魔法入門編なる本の一頁目を音読し始める。

 テーブルに置かれた本の中身を覗き込むと、想像していたとおり、そこにはペトログラフのような文字が書かれていた。


『心配しているようだけど、普通に読めるでしょ?』


 しばらく黙っていたアムが、いきなりそう声をかけてくる。

 不思議だが彼女の指摘どおり、僕は本に書かれている内容を普通に理解する事ができていた。


『何も不思議がる事なんてないでしょ? こちらの世界の言葉だって、最初から自然に理解できてたじゃない』


 なるほど、そういう事か。言葉のときも何となく予想していたが。天使と融合した事で、そういったスキルが初めから付与されている状態なのだろう。

 まぁ普通に考えれば、僕たちを召喚した帝国からしたら即戦力が欲しいわけだ。ある程度の戦闘訓練は仕方がないとしても、言葉や文字も理解できない状態からでは教える方の苦労も尋常でないものになってしまう。


「ごめん、カケル……そういえば全く確認していなかったけど、ひょっとして文字を読む事ができてなかったりする?」


 また考え事をしていたせいで、上の空になっていると感じたのだろう。エリスは、申し訳なさそうに僕に質問してきた。


「いや、大丈夫。普通に読めてるみたいだよ」

「そうよね。シンジュウロウのときも、勉強なんてしなかったのに最初から読めてたって言っていたもの」


 僕の返事を聞いて、エリスは安心した様子でそう答える。そんな彼女の表情もまた可愛いものだ。


 さっきエリスが言っていた事を思い出したら、本当に勉強なんて上の空になってしまいそうだが。それでは彼女の大胆な行動についても、あまり否定的な事は言えない。

 そう思い直した僕は、本気で魔法の知識を吸収しようと、彼女の講義に集中し始めた。

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