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厨二で何が悪い! ~前世の記憶が最強すぎて他の召喚者たちがまるで相手にならない。Eランク勇者の俺が世界を救ってみせる~  作者: その辺の双剣使い
3─2

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125.魔物の正体①



「来るぞ! 気をつけろ!」


 スラム街の中程に来たところで、俺は邪悪な気を持った者の殺意をはっきりと感じ取る。これだけ近くに来ているにも拘わらず、非常に実態のわかりにくい相手だ。もう見えていてもおかしくはない距離のはずだが、この状況においても全く視認する事さえできない。


 俺の言葉にすぐ反応したアイシャは、戦闘態勢を取りつつ周囲を警戒する。一方の俺は、家々の屋根伝いに動く影に向かって数発の弾丸を打ち込んだ。


「ちっ、外したか」


 激しい粉砕音と共に数軒の屋根が消し飛ぶ。対象に当たらなかったとはいえ破壊の痕跡は凄まじく、それを見た敵はどうやらこちらの力に警戒心を抱いたようだ。

 完全に静まり返る状況に、珍しくアイシャは焦ったような声色で言う。


「なんだか変にゃ。何処からでも狙ってるような気がするにゃよ」

「お前もそう感じるか? 単体だと思うが、あちこちに目が有るかのような感じだ」


 気配感知さえあれば相手を特定する事など容易い。そう思っていたが、どうやら甘かったようだ。

 自らの力を過信し、不用意に突入する事を判断した自分に対し、俺は少しだけ後悔の念を抱きはじめていた。


「相手が一体しか居ないせいで混乱するかもしれないが。単純に、沢山の敵に囲まれているときと同じようなものだと考えれば良い」


 俺は、自分に言い聞かせるように、アイシャに対してそう言ってみせる。


 アイシャも、俺ほどではないものの気配感知は働く。

 街灯もない深夜のスラム街は、二重の輪っかを持った、青白い月の明かりだけが照らす薄暗い世界だが。むしろ見えにくい状況であればあるほど、他の感覚はより研ぎ澄まされる。

 相手の変わった特徴に騙されるような事さえなければ、逆に感覚だけで戦えるこちらの方が有利だ。


「わかったにゃ!」


 そうアイシャが返事するやいなや、金属を弾くような音が辺りに響く。正体不明な敵の攻撃が俺たちを襲い、彼女が鉤爪でそれを弾き飛ばしたのだ。

 最初の一撃を皮切りに、雨あられのような攻撃が俺たちの頭上から襲いかかる。俺とアイシャは、感覚だけを頼りに刀と鉤爪を使ってそれを受け続けた。


「なかなかやるねー。僕の攻撃を全部受けきった奴なんて、お前たちが初めてだよ」


 相手の攻撃が一旦やんだところで、突然そう声が響いてくる。俺は、その声がする方に向かって再び一発だけ銃撃した。

 弾丸は石の壁を突き破り、その勢いで着弾した家の上半分が吹き飛ぶ。


「こわっ! 当たったら一発で消し飛ばされてしまうね」


 敵のものと思われる声の出所は、明らかに移動している。

 相手が、レールガンの速度を超える回避能力を持っているとも思えないし、意識して避けたのだとしたら、こちらの動きは完全に読まれている事になる。

 それより気になるのは、さっきからこの相手が言葉を喋るということだ。

 魔物かと思いきや、実は人間だったのか。それとも人語を操る、知能の高いタイプの魔物だとでも言うのだろうか。


「蜘蛛にゃ……二メートルくらいにゃか?」


 突然そう言い出すアイシャ。夜目が利く彼女には、敵の姿が見えているようだ。


「確かか? 声の主がそうなのか?」

「間違いないにゃ。声のする方向と一致してるにゃよ」


 小声で話していても、こちらの会話は丸聞こえだったようである。会話の後すぐに、その相手も話しに混ざってきた。


「あれ~、バレちゃたみたいだね~。でも僕の事を、その辺の巨大蜘蛛と一緒にしてもらっちゃ困るよ」


 魔物であるにも拘わらず、流暢に言葉を操る時点で普通じゃないのは分かる。少なくとも、アイシャの言葉どおりなら人でない事だけは確かだ。

 目を凝らすと、ようやく俺にもその姿が朧気に見えてきた。

 まだシルエットくらいしか分からないが。そう言われると確かに、蜘蛛みたいな形をしているようにも見える。

 その魔物は、周囲に黒い靄のような物を纏っていた。

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