122.次の目的地
闇の帝王ことアフカルを倒しにいく、という事で話は纏まり、俺は議題をエリス捜索の件に移した。
ミコトは、余計に不機嫌な様子になるも、このままいつまでも言い出しにくいなんて事もいってられない。こちらの希望をある程度は叶えるという約束だし、ここで集まった事は今後の予定を定めるうえでも良い機会だ。
ヴィラが、父親のドラクと別行動を取っている理由はエリスの件が関係していた。
彼女の話によるとドラクは情報を得る目的で、紅き月の狼である事を伏せ荒野の白狼に潜入しているらしい。
今のところ得ている情報としては、連中がエリスの潜伏場所を魔女の森だと考えているという事だけのようだ。
現在ドラクは、ギルド支部で乱闘を繰り広げた連中とは別のパーティーに加わり、魔女の森を捜索している最中だという話だった。
とはいえ、俺はエリスが既にこの周辺には居ない事を、気配感知の能力によってわかっていた。
探しにきてくれたのは確かだろうが、どうやら入れ違いになってしまったようである。
吹き飛ばされた左腕の残骸を見つけた彼女が、俺の事を死んだと誤解していなければ良いが。
まぁ、エリスが左腕や指輪を見つけていたとも限らないし、それについてはあまり悩んでいても仕方がないだろう。
エリスを探す理由は違えど、荒野の白狼が持つ情報網は有益である。そのため、ドラクには引き続き潜入を続けてもらう事にした。
因みにドラクとヴィラの親子は、遠く離れていても念話でやり取りができるようだ。
「探すって言っても、完全に手詰まり状態だよね? 取りあえず新しい情報でも入らない限り、ボクたちは最初の目的のために動くべきなんじゃないかな?」
あまりエリス捜索に乗り気ではないせいか、珍しくミコトは自分の方から目的についての話を切り出す。
今のタイミングなら、具体的な行動について聞けるのではないか。そう感じた俺は、単刀直入に訊ねてみる事にした。
「確かにそうだが、目的のためって言っても具体的に次はどうするつもりなんだ?」
「ボクたちの本拠地に行くって話はしたよね? その場所は別の大陸にあるから、まずはそこへ行くための移動手段を確保しようと思うんだ」
思ったとおり、ようやく具体的な行動について聞くことができた。別の大陸に行くなんて、そこまで想定してはいなかったが。
移動手段とは、大海を渡れるような船でも購入するという事なのだろうか。
「樹海を出るのも初めてにゃのに、別の大陸にまで行けるにゃんてワクワクするにゃよ。話に聞く海ってやつも見れるにゃかね?」
アイシャは、そう言って無邪気にはしゃぎだす。
「海ならたぶん、空の上から見られると思うよ」
ミコトはすぐに、そんな意味深長な事を言って返す。
神の眷属が言うことだけに、俺はそれを聞いて瞬間的に飛空艇などをイメージし期待に胸を膨らませた。
冒険者登録も無事済んだ事だし、この村にいつまでも居る理由はない。
という事で俺たちは、一泊だけして次の目的地へと移動することにした。
ドラクを一旦ここに置いていく事にはなるが、念話でやり取りできるので合流するのは容易い。そのためヴィラだけが、取りあえず俺たちのパーティーに加わるという話になった。
翌朝、テペの村を出発した俺たちは、次の目的地としてベラドーナという名の都市に向かっていた。
アンスルクス帝国の首都エルゼキシアに次ぐこの都市の近くには、冒険者の間で最も利用される事の多いダンジョンがあった。
現在、三十階層まで発見されているようだが、実際に何階層まであるのかについては分かっていない。
最も多く利用されるダンジョンだけあって、有名な冒険者クランの殆んどがここに本拠地を置いている。
ヴィラの話では、荒野の白狼やブシドーもこの都市に本拠を構えているということだ。
途中いくつかの町を中継し、ベラドーナに到着するのは一週間後になる予定である。
当然、徒歩ではその倍はかかるので、次の町に着いたら馬を調達する予定だ。
街道を歩く俺たちに対し、すれ違う者たちが好奇の眼差しを向けてくる。
絶世の美女二人に獣人の美少女、加えて翼の生えた幼女を連れているのだから、そんな目で見られるのも当然である。
今さら気づいたが、一応この状況って異世界ハーレムってやつだよな。
冒険者パーティーっぽくないこの顔ぶれに、俺は少し落ち着かない気分となっていた。




