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厨二で何が悪い! ~前世の記憶が最強すぎて他の召喚者たちがまるで相手にならない。Eランク勇者の俺が世界を救ってみせる~  作者: その辺の双剣使い
3─1

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118.ヴィラドリアの事情



 冒険者たちがよく利用するためか、人口のそれほど多くない村にしては複数の宿が営まれていた。

 少しだけ同じ宿である事を期待したが、残念ながらヴィラドリアの泊まる宿は俺たちとは別のところだったようだ。

 ここに来るまで、彼女は俺の手を握り続けていたが。無理やり離してしまうのも逆に変な雰囲気になりそうなので、仕方なく俺はそのまま彼女にエスコートされる形を取っていた。


 悪意こそ感じられないものの、宿に着いた途端ヴィラドリアは明らかに落ち着かないといった感情を出しはじめる。

 変な事をするつもりなんてないと言っていたが、俺の気配感知は彼女の邪な感情を機敏に感じ取った。

 取りあえず話をするだけなら、ギルドの建物内でも良かったはず。妙に強引だったし、やはり何も他意はないというわけでもなかったようだ。


「自分の部屋でしたら、お茶でも出すところなんですけど。何もお構いできずに申し訳ございません」


 部屋に入るなり、ヴィラドリアはそう言いながら椅子に座るよう促す。

 俺が椅子に腰かけると、彼女はベッドの上に腰を下ろした。


「それで、話ってのはどんな事なんだ?」


 話をする以外に何か企んでいる可能性を感じつつも、俺は平然とした態度で聞く姿勢をみせた。


「わたくしの事情を説明する前に、まずはカケル様に話しておくべき事がございます」

「ああ、じゃあ聞こうか」


 絶対的な強さ、という裏付けがあるっていうのは良いな。相手の出方がどうあれ、自分の身を守るという点に関しては心の底から平然としていられる。ミコトたちに出会う前だったら、恐らくこうはいかなかった。


 全く動じる様子を見せない俺に対し、ヴィラドリアは少し困惑しているように見えた。

 恐らく向こうも、俺が疑念を感じてる事に気づいているはずだが。それでも全く意に介さない相手に、少し後悔の念を抱きはじめているのかもしれない。


「ずいぶんと余裕ですわね。わたくしのこと、完全に信用してくれているといった感じでもなさそうですが」


 結局なかなか本題に入ろうとしない彼女の言葉に、俺は深く溜め息をつく。


「話がないなら俺は帰るぞ」


 俺がそう冷たく突き放すと、ヴィラドリアは目に涙を浮かべはじめる。

 本当に悲しくてそうなったとも思えないので、次の反応を見ようと何も言わずにいたが。浮かんだ涙が頬を伝ったところで、彼女はそれを手で拭いながらようやく複雑な心情を語りだした。


「申し訳ございません。これは嬉し涙です」


 あまりにも予想外の答えに、俺は「はぁ?」と気の抜けた声をあげてしまう。ラスボスなんかに有りがちな、何か悪い考えの裏返しとも取れるが。相変わらず彼女からは、俺を害そうとする気配を感じなかった。


「ようやく千年の呪縛から解き放たれる時がきました。これだけ聞けば、何となく察しがついたかもしれませんが。実はわたくし、普通の人間ではございませんの」

「エリスから、紅き月の狼は千年前に活躍したパーティーだって聞いていたが。エルフでもないのにそんな長寿だなんて、確かに普通ではないよな」

「ええ、実はある男によって無理やり眷属とされてしまって……あなた様の力を確信したことで、あの男をようやく殺せると思いつい感情が溢れだしてしまったのです」


 その後ヴィラドリアは、自身に起きた事に関して詳しく語りはじめる。


 要約すると次のとおりである。

 彼女は、千年前に存在していたルマーニャ連合国という国で生まれた。父のドラクは大公であり、一人娘であった彼女は十六になると、病弱な父に代わって国の運営を担うようになった。姫騎士として戦場に赴く事もしばしばで、隣国から攻め込んできた十万の大軍を、僅か八千騎で撃退するほどの武勇も誇った。

 それからしばらくして、アフカルという邪神の僕となった男に見初められ、付け狙われた挙げ句に無理やり眷属にさせられてしまったらしい。

 アフカルという男は吸血鬼の真祖であり、その眷属のとなった彼女もまた吸血鬼となってしまった。

 強い精神を持ち、何とかその支配から脱した彼女は、父を自身の眷属とし共にアフカルの元から逃れた。

 冒険者家業をしながら逃亡生活を送り続け、定期的に身を潜めては現在に至るという話だった。


「で、俺に何をして欲しいって言うんだ?」

「端的に申しますと()()()()ことアフカルを、カケル様やエリス様のお力で倒して頂きたいのです」


 今、闇の帝王と言ったようだが。だとしたら、それはクラスの連中がやる仕事のはず。わざわざ倒しにいかずとも、静観していればそのうち連中が倒してくれるだろう。


「闇の帝王って言ったか? そいつを倒すって話なら、各国がそのためにわざわざ異世界人を召喚しているはずだが?」


 俺は、ヴィラドリアに対しそう疑問を投げかけるが、彼女の見解はそれを完全に否定するものだった。


「召喚者たちでは、絶対にあの男を倒す事はできません。過去に何度か封印が解かれた際もそうだったのです」


 それだけでは、まだ詳細はわからないが。少なくとも、奴らに倒す事ができなくても俺にはできるという話にはなる。

 理由によっては俺も召喚者なわけだが。単純な力の話をしているのであれば、どんなにレベルを上げても、召喚者が闇の帝王の力を上回ることはないと言いたいのだろうか。

 こんな時アムが居れば、彼女の言わんとしている事もすぐに理解できたんだろうが。


 困惑する俺に対し、ヴィラドリアは期待に満ちた顔を向けてくる。

 俺の気持ちは、そんな彼女の期待に応えてやりたいという方向に傾き始めていた。

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