三十
「……行ったか」
ヴェルファウドと二人きりになった部屋でぽつりと呟いた
……全く、カナリアの奴め……彼にも自分の理想を押し付けていたな。硬派がどうとか…私達と共に居た時と全く変わっていない
……あれだけ深く頭を下げられてはな。どれだけ護りたいかを知らされては…託さない訳には行かないだろう
零也君を信じると共に、彼を信じるしかない。もう私達はそれしか出来ない、身体が碌に動いてくれない
「……死ぬんじゃないぞ。私に絶対に死ぬなと言いながら自分は死ぬなんて都合が良過ぎる」
「……当たり前だ。私よりもお前の方がずっと命を削ったろう、一体どれだけ魔力に代替させたんだ」
「………重ねてしまったんだ。彼と……護れなかった自分を」
明言こそしていないが、こいつの言っている〝護れなかった〟というのは……エネミデアとホロコストの事だろう
護れなかった……か。ヴェルファウドの言う護れなかったというのは、二人が魔族とエルフから爪弾かれた事を言っているのか…?
……私が〝死ぬ〟間際…私の周りには沢山の人達が居た。人間も、魔族も、獣人も、エルフも、竜人も……全ての種族が互いを尊重し、共に手を取り合って暮らしていた
…何故そうなってしまったんだ。何故互いを怨み、憎しみ合い、啀み合うようになってしまったんだ
「……ヴェルファウド、私が死んでからの事を話せ」
「…何て事を言うんだ。死ぬなんて赦さないぞ、そんな事を決めている筈が「違う。以前の私……シノノメで在った時の私の死後の話だ」
ああ、と合点が行ったように小さく頷くとヴェルファウドは安堵の息を吐く。私が危険だとでも思ったのか……
……こいつがそう思うのも頷けるがな。この〝魔法〟は〝割が合わな過ぎる〟
命を代償に魔力を……〝生命力を魔力に換える〟。命有る者なら誰もが唱えられる魔法だ……自分の命をその糧にする覚悟が有れば、だが
命を代償に魔力を得られる。だがその得られる魔力は払う命に対して極僅かだ
魔力を失い、どうにもならなくなった時の最後の手段、危機が迫った時以外に唱える事など有り得ない割の合わない魔法ーーー……魔皇が居ない平和になった世界では唱える必要の無くなった魔法
〝代替魔法〟。私が唯に教えた身体強化魔法と共に廃れ、忘れ去られた古の魔法だ
恐らく今この魔法を唱えられる者は居ないだろう、〝当時を知る者〟か……それを〝教わった者〟しか
彼が最初にこの世界に来た時、私は既にこの世を去っていた。そしてその時既に種族はばらばらになってしまっていた
……ただの偶然なのか?私の死後にそうなってしまったのは
……ただの偶然なのか?〝私〟がこの世に居なくなってからそうなってしまったのは




