二十九
『そのツクヨミももうこの世には居ない……寂しいもんだね、背中を預け合った仲間がもう居ないってのはさ』
……カナリアの言葉を思い出した。そしてその時に三人が見せていた辛そうな顔も
辛そう…じゃない。辛いんだ、悲しいんだ。三人はあの時こんなに重い感情を受けてたんだ
胸が痛くなる。締め付けられる。苦しいよ、悲しいよ
会いたいのに会えない。話したいのに話せない。もう二度と三人には……
「………ヴェルファウド……シノノメ……やっぱり僕行く。僕を止めないで……お願い……お願いだから……僕を行かせて」
僕を見つめる二人に深く頭を下げた
足手纏いでも良い、僕の事は気にしないで良い、自分達の事だけ考えて良い。自分の事を、仲間の事を護ってくれて良い
僕は君を識ってる。君は僕の事を識らないだろうけど
君が望まれて産まれた子だって識ってる。愛されて産まれた子だって識ってる。僕はそんな君を護りたいんだ、絶対に
三人が残した君を護りたい。何があっても、自分がどうなっても
君に、その仲間に辛い思いを、悲しい思いを…あんな顔をさせちゃいけない。させない
「………シノノメ」
「ああ。お前の言いたい事は分かってる」
二人が顔を見合わせて…何かを唱え始めた
……詠唱…?二人とももう魔力を使い果たした筈じゃ…
……置かれている両肩から魔力が身体に流れて行くのを感じた。身体に力が戻って行くのを感じる
…傷が治り始めてる。ゆっくりだけど、確かに塞がって行ってる
「シロ、私達の〝命〟を君に託す」
「……え…?」
ヴェルファウドが唐突に…そう一言、僕へ告げた
命を…託す?
何を言ってるの…?命って…
「正確には命を代替にした〝魔力〟だがな。ヴェルファウドからは魔力、私からは傷の治癒……身体は未だ痛むか?身体に力は戻ったか?」
……痛くない。身体に力も戻ってる。立ち上がってもふらつかない、足がしっかりと僕の身体を支えてくれている
二人を見ると……二人とも顔を俯かせてた。浅く息をして吐いて……吐くその息は震えてた
疲れてる…?ううん、単純に疲弊してるだけじゃない……これは…
……〝命〟を…削ったの…?それを僕に…?
「……行くんだ。絶対に護りたいんだろう」
「ジェーノ君の側には私の娘も居る……どうか、私の代わりに娘も護ってくれ」
「……ありがとう、託してくれて。僕、行って来るね」




