二十八
立ち上がろうとした僕の隣でヴェルファウドが僕の肩を叩いた。僕の顔を見て小さく首を左右に振って止めろと促して来る
「魔力も無い、傷も治り切っていない。今の君が行っても足手纏いになる。それは私達も同じだ、私達はもう信じて待つしか無い」
「駄目だよ…!あの人と闘ったら殺されちゃう…止めないと駄目だよ…!」
「……今のジェーノ君は独りじゃない。彼を護ってくれる仲間が居る、そして彼も仲間を護ってくれる。彼等を信じるんだ」
「でもっ…!」
「エネミデアとホロコストの子だ。二人の子を信じてやってくれ」
「…!」
逆の肩をシノノメに叩かれて……そう言われた
……肩に入っていた力を抜いて、竦んだ肩を落とす。膝立ちの状態で大きく溜め息を吐いて…視線を落とした
……顔が上げられない。どうして僕はこんな事をしちゃったんだろう
怒りに身を任せなければ魔力を使い切る事なんか無かった。魔力が残っていれば二人の赤ちゃんを護りに行けた、シノノメもヴェルファウドもこんな状態になんかならなかった……赤ちゃんを助けに行けたのに…!
…ううん、その前に僕がちゃんと二人の話を聴いていれば……その前に間違いに気付いていれば…!
……間違ってばっかりだ。僕は…沢山間違えた。その所為でこうなっちゃったんだ……こんな……こんな事に……!
「………ジェーノ君も君と同じ過ちを犯した。沢山の命を奪い、世界を壊しかけた」
「………え…?」
……ヴェルファウドの言葉が上手く処理出来ない
僕と同じ…?命を奪った…?世界を壊しかけた…?
何…で……そんな事有り得ない、そんな事エネミデアもホロコストも許す筈無い、カナリアだって絶対に止める筈だよ
そんな事……三人がさせる筈無いよ…
それを止める事が出来なかったのは……止められなかったのは……
「……エネミデアは……?ホロコストは…?カナリアは…?ねえ、三人は今何処に居るの?ジェーノって二人の赤ちゃんの名前だよね?何でそんな事させたの?何で三人はそれを止めなかったの?」
訊いてしまった。識りたくない事を。分かりたくない事を
識ってる。分かってる。三人が〝居たら〟それをさせる筈無いって
それをさせてしまった………それが示す答えは……
「…………三人とも、もうこの世に居ない。止められなかったのは三人が既にこの世を去った後だったからだ」
…………この世を去った。
…………もう、居ない。
「……必ず会おうって、言ったんだよ。エネミデアも、ホロコストも、カナリアも」
「…………………」
「ずっと待ってたんだよ。また会えるのを」
分かってる。こんな事を言ってももうどうにもならないって
こんな事をヴェルファウドに言っても、ヴェルファウドが辛い思いをするだけだって分かってる
「僕に……元気な赤ちゃんを見せてくれるって……必ずまた会おうって……言ったんだよ…」
分かってる。非道い事を言ってるって、悲しい思いをさせてるって…分かってる、分かるよ
ヴェルファウドも三人の事が大切だったんだって、シノノメもそうなんだって…僕を見るその顔が……そう言ってるから




