二十二
『赤ちゃんが無事に産まれ、落ち着いたら……私は貴方にまたこの世界に来て欲しいと思っています。その時は貴方を呼んでもよろしいですか?』
「うん、良いよ。その時は壮健な赤ちゃんを見せてね」
『はい、必ず。ですが別の方が貴方を呼んだ時は…もしかするとその呼んだ場所が私達の居る所と遠く離れているかもしれません』
ああ、そっか。エネミデアとホロコストじゃない誰かが呼んだら二人の居る所とは全然違う所に来ちゃうのか
そうなったらどうしよう?この世界は凄く広い、折角来ても何時迄も会えないかもしれない。それはやだな
『私達が呼ぶ前に呼ばれ、この世界に来てしまったら……その時はどうか困っている人を、助けを必要としている人の力になってあげて下さい。貴方が私達の事を助けてくれたように……貴方が今言われているような方では決して無いと、多くの方に分かって頂けるように』
「うん」
『貴方がそうしてくれるのなら、きっと私達の耳にも入ると思います。その時は絶対に貴方に会いに行きます、元気な赤ちゃんと共に』
『お前には礼を返せずにいる。また会おう、必ずだ』
『おや、その中にあたしは入れてくれないのかい?あたしも虚…いや、シロにはまた会いたいと思ってるんだけど』
『お前は先ず獣人の説得を頼む。そうする為にも』
『責任重大だねぇ、精々気張るさ。ならあんたは先ず最高位魔法を無事に唱える事だね、そうする為にも』
『ふふっ、責任重大ですよ?』
『…………重圧を掛けるな』
……何だろう、この感覚。
ふわふわして、あったかい。胸の辺りがじんと滲むような感覚
…凄く気持ちの良い感覚。今まで感じた事の無い感覚
柔らかくて、優しくて……ずっと感じていたくなる。この世界に来て、僕は今一番満たされている
また会いたいな。この人達に
また戻って来た。この場所に、この世界に。
ホロコストとエネミデアが魔法を衝突させて現れた裂け目は僕が通って程無く消滅してしまった。もうあの世界には戻れない、僕を呼んでくれるまでは
何も無い世界。
真っ白で、真っ新で、ただただ空虚な世界。
その時を待とう。僕の事をまた呼んでくれるその時まで。
そう言ったから。エネミデアが、ホロコストが、カナリアが…また会おうって
だから僕は待つよ。待てるよ。その時が来るまで
いつかまた会えるその時まで。




