二十
『…待て。その話の通りならば虚をこの世界に来させる為に最高位の魔法を使った奴が居る事になる、そんな奴が私達の他に居るのか?』
『さあね。でもこうして虚が此処に居る、つまりそう言う事なんだろ?あたしも俄かには信じ難いけどさ…召喚の魔法陣を形成する緻密な構築は出来なくても、最高位の魔法を使えるだけの魔力を持った奴は確かに居る』
『……本当に……そんな人が…?』
『何の為に虚を此処に来させたのかは分からない………不気味では有るね、今になって何で急に動きを見せたのか』
『……………シノノメが黄泉を渡ってからだ、少しずつ狂い始めたのは。人間が、獣人が、魔族が、エルフが、竜人が……共に手を取り合っていた五種族が離れ、啀み合うようになってしまった』
『…あんた等はそれの最たる被害者だもんね。本当に……何でこんな事になっちまったんだろう』
また三人が同じ表情をしてる。凄く辛そうにしてる、悲しそうにしてる
……悲しい、辛いってどんな感覚なんだろう。きっと気持ちの良い感覚じゃないんだろうな…三人の顔を見ればそれくらいは分かる
『…駄目だね、あんた等と居るとつい昔を思い出して話が逸れちまう。エネミデア、ホロコスト。虚の為に、そして自分等の為に、そのお腹の中の子の為に一踏ん張り出来るかい』
『……はい!』
『……シロ、お前はそれで良いか』
………?何でそんな事訊くの?それ以外方法が無いならそうするしか無いのに
……………帰ったら、もう二人には会えないのかな
カナリアとももっと話してみたい。さっき僕に教えてくれたみたいにカナリアも僕に沢山の事を教えてくれると思う
…でも、それを言ったら二人は此処に残れない。此処を離れる為に歩かせたらエネミデアに辛い思いをさせちゃう、産まれて来る赤ちゃんをちゃんと産ませられるか心配だって、不安だって…ホロコストもエネミデアも言ってた
産まれて来る赤ちゃんも見てみたい。どんな形をしているんだろう、顔をしてるんだろう、赤ちゃんを見て二人はどんな顔をするんだろう、その時僕は何を思うんだろう
……この世界にはまだ沢山、沢山識りたい事が有る
………僕は
「うん、良いよ」
良いよ。僕はそれで良い
僕が識る事より、エネミデアの方が優先。
僕が識る事より、ホロコストの方が優先。
僕よりも……自分よりも二人の方を、産まれて来る赤ちゃんの方を優先するべきなんだ




