十八
『待ってシロ君っ!出て行ってどうするの!?』
エネミデアが大きな声で僕に訊いて来る。普段声を荒げないエネミデアが僕に対してこんな風に大きな声を出す事は初めてだった、その声に少しだけ驚いてしまった
……どうする。か…どうしよう?何も決めてないや
うーん……どうしよう
「決めてない」
『俺達と離れた事で矛先がお前に向くかもしれんのだぞ。単独のお前ならば打ち斃せると徒党を為して襲って来るかもしれない』
「大丈夫だよ。あの人達弱いもん」
『魔族だけならば、だろう。種族を襲う脅威の排除の為に種族同士が手を組んだらどうする』
「そうなったらエネミデアとホロコストは追われなくなるでしょ?魔族とエルフの仲が元に戻れば二人を狙う理由が無くなる」
『俺が言っているのはそんな事では無い!!』
…怒られた?
エネミデアと同じようにホロコストも声を大きく荒げてしまった。何で?二人が追われなくなるならそれが一番なんじゃないの?
『…シロ君、貴方が私達の為にそうしてくれようとしてるのは分かります。けれどその為に貴方が危険な目に遭う必要なんて無いんです』
「危険じゃないよ。遣られないよ、僕」
『…お前の強さは俺達が充分知っている。だが、それでも駄目だ』
……何で二人はこんなに僕を行かせないようにするんだろう、僕が居なくなれば良いだけなのに
それで問題が解決するならそうすれば良いんじゃないの?
……分かんないよ
『あたしから一つ提案しても良いかい』
カナリアの声に僕達三人が一斉に目を向ける。提案…?何か良い方法を思い付いたのかな
………やっぱり僕が居なくなる事が一番簡単で早い方法だと思うんだけど…何が駄目なんだろう
何でエネミデアもホロコストも頑なにそれを拒むんだろう。考えても考えても答えは出てくれない
『あんた等は虚を危険な目に遭わせたくない。そんでそれはあたしも同じ意見だ……が、此処に留まらせる事は不可能だ』
『…何故だ』
『獣人達が此処にやって来たあんた等の言う追っ手に居場所を吐くかもしれない。虚に対する恐怖に負けてね』
『………流れる噂を鵜呑みにしてか』
『そうだ。あんた等はまだ良いさ、獣人達全員があんた等の顔も追われている事情も知ってんだから。だが虚は?知ってる事なんて流れる噂しか無い、そしてそれが今間近に居る……例えるなら首元に刃物を突き付けられてる感覚じゃないか?』
カナリアの言葉に何も返さずにホロコストは顔を歪めて歯を食い縛っている
いつ殺されるか分からない、なら居場所を教えてしまった方が幾らかでも生き残れる可能性が上がる…獣人の人達はそう考えるって言ってるんだ、カナリアは
「ホロコスト、もう良いよ。僕が居なくなれば済むんでしょ、そうしようよ」
『…だが…!!』
『二人を匿うには虚が居なくなるしか無い、だけどあんた等は虚を危険な目には遭わせたくないーーーそこであたしからの提案に繋がる』
『…カナリア…何か策が有るんですか?シロ君を危険な目に遭わせず、私達を此処へ匿える策が』
カナリアが小さく頷く。本当にそんな方法が有るの?
…本当に危険じゃないのに。遣られないのに。あんな奴等に遣られるような事なんて絶対に無いのに
そう思っている僕の目をカナリアがしっかりと捉えた。じっと真剣な瞳で僕を見つめて…その口をゆっくりと開いた
『虚、元居た世界に帰るんだ。そうすりゃあんたは危険な目には遭わない、二人は匿えるーーーかもしれない。これが現状の中で打てる最善の策だ』




