十五
『さ、あんたが急かす話を聴こうか』
落ち着ける所ーーーカナリアが住んでいる所なのかな、他よりも大きめの家の中に入って対面するように椅子に腰掛け、卓に頬杖を付きながらカナリアはそう訊いて来た
『……ま、あんた等が置かれてる状況とその腹を見れば察するのは難しくないけどね』
そう言ってカナリアは目を細めながらエネミデアのお腹を見て小さく微笑んでいた
赤ちゃんの事を言ってるんだよね、多分。赤ちゃんを見るとそんな風に笑えるんだ
…まだ姿も見えないのに、そんな風に笑えるんだ。そういえばエネミデアもホロコストも赤ちゃんの事を話す時は同じ表情を浮かべてた
……僕には分かんないや。何でそんな風に笑えるのか
『……お前が思っている通りだ。この子が産まれるまでの間で良い、この場に俺達を匿って欲しい……頼む』
そう言ってホロコストは立ち上がり深くカナリアへ頭を下げた。ふぅん、お願いする時はそうやるんだ
『カナリア…お願いします、私達にはもう頼れる人が貴女しか居ません』
ホロコストと同じように立ち上がり頭を下げてエネミデアもお願いしてる。これ僕もやった方が良いのかな?
二人を見るカナリアは凄く難しい顔をしてる。迷ってる…?のかな?
僕も頭を下げれば少しは迷わずに済むのかな?何かを決める足しになるかな?とりあえず僕も同じようにしてみよう
「僕もお願い」
二人に倣って頭を下げる。それから少しの間沈黙が続いて…カナリアが乱暴に頭を掻いたような音が聴こえた
『…頭を上げな』
カナリアのその言葉通りに頭を上げて顔を窺う。その顔はさっきまでと変わらない、顰めたままだ
『あたし個人の意見としちゃあんた等を匿ってやりたい。共に魔皇を斃す為に力を合わせた盟友の頼みだ、叶うなら聴いてやりたいさ』
あんたとは初対面だけどね、と僕を見ながらそう言うと立ち上がって僕の前に歩いて来る。何だろう、僕を見下ろして…カナリアはふっと口元を緩めた
『男が簡単に頭を下げるんじゃないよ!あんた大して何も思わずに頭を下げたろうっ!なーにがお願いだ!心にも無いお願いしやがって!』
そう言ってくしゃくしゃ僕の頭を撫でて来た。撫でて…?違う、凄く乱暴。ぐりぐりされてる。顔がぶれる、視界が揺れる
「な、何で?ホロコストも頭下げたよ?」
『ホロコストとあんたじゃ重みが違うんだよ!今のあんたの頼みは軽い!良いかい、男なら頭は簡単に下げない!下げる時は今のホロコストのように絶対に護りたいと思う奴の為に下げな!!』
『…おい、それを言ったらこいつは本当にそうするぞ、加減を教えておけ』
『男はそのくらいで良いんだよ!そのくらい硬派で芯が通ってる方が格好良いじゃないか!』
『……そんな事だからいつまでも番が出来んのだぞお前は』
『あー言ったね!?言ったね!!?密かに気にしてる事を言いやがったねあんたっ!!?』
『カ、カナリア!落ち着いて〜っ!!』




