十
雪の当たらない所…使われていないぼろぼろの廃屋に移動して二人は僕と対面するように腰を下ろした。同じように僕も腰を下ろすと…エネミデアが少しだけ顔を歪めて僕を見つめる
……?何でそんな顔をするの?
『…ごめんなさい。私達がこんな状態じゃなかったら貴方を一人で置いて行ったりしなかったのに』
「…?」
…どういう事?分からないのは僕が何も識らないから…じゃないよね?
エネミデアの言っている意味が分からず男の人に説明を求めようと顔を向けると…男の人は小さく息を吐いて、重たく口を開いた
『前に会った時に話したかは覚えていないが、俺とエネミデアは追われている。魔族とエルフの裏切り者として』
「裏切り者?悪い事したの?」
『…悪い事、か。愛する者と共に生きる事が悪いと言うのならばそうなるな』
そう言うと男の人は…笑って…いる…のかな。口元は緩めているけど、その顔はさっきのエネミデアとそっくりだった
そしてエネミデアはさっきよりもずっと顔を歪ませていた。視線を落として、優しくお腹を摩っている
『……俺達が共に居るとお前に危険が及ぶ。それを避けるには早々に別れるしか無かった。そしてそれは今も続いている』
「ふぅん、そうなんだ」
『……お前は本当に感情が希薄だな。言っている意味を理解しているのか?』
「うん。二人は今危ないんでしょ?」
『…そうだ。本来ならば今エネミデアを動かせる事は避けたいんだがな』
「太ったから?」
『太ってないですっ!!!私のお腹の中に赤ちゃんがいるからお腹が膨らんでいるんですっ!!!』
「……赤ちゃん?」
赤ちゃん…って何?
赤ちゃんが居るとお腹が膨らむんだ。なら僕にも赤ちゃんが居たらお腹が膨らむのかな?エネミデアのお腹は前に会った時よりかなり膨らんでるし…僕がもしそうなったら凄く動き辛そう
「僕のお腹の中に赤ちゃんが居たら嫌だな。動き辛そうだし、そんな風になりたくない」
『……うーん、と…貴方は男の子……ですよね?』
『止めておけエネミデア。こいつに一つ説明したら一つ質問が返って来る、何時迄も終わらん』
そう言って男の人は…強い視線を僕へと向けた。明らかに分かる敵意を隠そうとせずに
……?僕そんなに言っちゃ駄目な事言ったのかな、思った事をそのまま言っただけなのに
『お前達は此処に身を潜めていろ』
…ああ、僕に向けたんじゃなかったんだ
足音が聴こえる。それもかなり多い、雪を踏み締めてこっちに歩いて来てる…迷う事無く、一直線に
そっか、僕達の足跡が残ってるんだ。それを辿って来てるんだ、この足音の人達は
「僕が追い返してあげようか?エネミデア動かない方が良いんでしょ?行かなくて良いよ、傍に居てあげて」
『…何を言っている?追って来ているのは恐らく魔族の精鋭達だ、お前が追い返せるような生半可な強さでは無い』
「大丈夫だよ。追い返すくらい簡単だもん」
『!おいっ!』
「待ってて良いよ、直ぐに戻って来るから」




