九
僕はどうして此処に来たんだっけ。どうやって此処へ来たんだっけ
……それも分からない。此処に来た目的が、理由が有ったのかな
……あれ?
思考して俯せていた視線を上げると、今居た筈の二人が居なくなっていた
何処に…行ったの?
そう思っているうちに景色が歪んで行く。ぐにゃぐにゃとうねうねと渦を巻いて…
『えぇっ!?』
「?」
背後から掛けられた大きな声に振り向くと…居なくなったエネミデアが居た。その隣にはあの男の人も居て…二人とも目を開いて僕を見ている
どうしてそんなに驚いているんだろう。僕が驚かせるような事をしたのかな
『……あれから三月は経っている筈だが…』
『貴方まさか…ずっと此処に居たの!?』
…ずっと?
……ああ、二人と別れてからずっと此処に居たんだ、僕
色の付いた景色はいつの間にか一面が白くなっていた。はらはらと何かが舞い……地に落ちて白く染めて行く
染まらないのは僕だけ。地面に積もるそれは僕には積もらない、まるで僕が弾いているように僕に当たらない
『…もしかして、まだ迷子なの…?』
「識らない。分かんない」
『…………………』
「ねえ、これ何?」
上を見上げながら指差す。今度はエネミデアを指差していないから僕が訊きたい事を間違えずに教えてくれると思う
『これ…って……〝雪〟の事?』
「ふぅん、これって雪って言うんだ」
僕の世界にはこんなの無かった。何の変化も無い世界だった
だから新鮮だった。その変化を見る事が
初めて会ったあの後、僕の訊きたかった事をエネミデアは教えてくれた。僕やエネミデアの髪を撫でたのは〝風〟なんだって
その風が強く吹く時もあれば全く吹かない時もある。雪じゃないものが上から落ちて来る時も有る、息を吐くと息が白くなって目で見える時も有る、白くならずに見えない時も有る
そうした変化が新鮮だった。それを見る事が新鮮だった。だから僕はこうして此処に居た
そして今…また二人に会って〝変化〟が見れた。男の人の方は前見た時と殆ど変わりは無いけど
「エネミデア、お腹膨らんでる」
『…太ったんじゃないですよ?』
「太る?太るって何?」
『物を食えば食うだけ肥えるだろう、確かにエネミデアはよく食うが』
『ちょっと!!』
「食べるって何?」
『…冗談か?笑えんぞ』
「冗談って何?」
『……………………お前はこの地の妖精か何かなのか?』
「妖精って何?」
『駄目だ話が進まん、このまま居るとお前の身体に障る。雪の当たらん所に移動するぞ』




