八
『ねえ、貴方何処から来たの?』
…………あれ
僕……何してたんだっけ
誰……だっけ、この人……
僕を見て柔らかく微笑んで声を掛けて来た女の人……
……誰…だっけ
「識らない。分かんない」
『あら、そうなの?って事は迷子なのかしら?』
首を傾げながら僕に再度問い掛けて来る。それも識らない、分からない
迷子…なのかな。此処は見た事が無い景色ばかりだ
真っ白な世界じゃ無い、色の付いた世界
何かが髪を撫でる。前髪が揺れて擽ったくなる
揺れているのは僕の髪だけじゃ無かった。僕を見つめているその人の髪もふわりと浮いている
何だろう、これ
『どうしたの?そんなに不思議そうな顔して』
「…これ、何?」
『これ……?』
指差してみても僕が訊いたものが分からなかったみたい。自分の事を指差されていると思ったのか、少しだけ眉間に皺を寄せて…その人は少しだけ頬を膨らませた
『人の事を〝これ〟なんて言っちゃ駄目ですよ。私は〝エネミデア〟って名前が有るんですから!』
「違うよ、僕が訊きたかったのは…」
『おい、いつまで待たせる気だ』
不意に声がして…声の方に目を向けると、訝しげに僕を睨むように見据える男の人が立っていた
誰……だっけ、この人
『……誰だこいつは』
『うーん…迷子…?ぼうっと立ってるのが見えたから声を掛けたんですけど……』
『…お前はもう少し警戒しろ。こいつが俺達を追って来た奴等だったらどうする気だったんだ、今は満足に動ける身体じゃないだろう』
『大丈夫!その時は貴方が護ってくれるでしょう?』
『……………………万一を考えろ。俺の目の届かん所に居ては護れるものも護れん』




