六
「この子は今身を守っていた。お前の一撃を受ける事を怖がっていたんだぞヴェルファウド」
「……………………」
怖がって……いた……?
……ああ、そうなんだ。これが怖いって感情なんだ
竜王サマの攻撃を受ける事が怖かったんだ僕は。あの痛みをもう一度受ける事が怖かったんだ
……それなら。
それなら……尚更分からない。竜王サマもおじさんも…その痛みを受けてでも護ろうとする理由が
何で?どうして?何がそうさせるの?分からない、分からないよ。識らない、何で僕は識らないの?
分からない。識らない。何で?どうして?
どうして僕は皆が当たり前に分かる事が分からないの?どうして僕は皆が当たり前に識っている事を識らないの?
どうして……どうして僕はこんなにも虚っぽなの?
どうして僕は何も識らない、分からない、虚っぽな存在なの?
……分からないなら、分かるしか無い。
……識らないなら、識るしか無い。
そう、そうだよ。僕はその為に二人の事を待っていたんだ
この二人ならきっと僕に分からないものを、識らないものを教えてくれるって…そう思ったから僕は此処に残ったんだ。現に僕は教えて貰った
その時が来るのを待っている間、思い馳せて胸が弾み焦がれる……楽しいという感情。
拒絶したくなる……それが来るのを拒みたくなる、息が詰まって動悸が激しくなる…怖いという感情。
そして今……初めての感情が僕の中に生まれている。沸々と……お腹から胸へ、頭へ抜けるように湧き上がっている
顔が歪んでしまう。抑えられない。何なんだろう、この感情
頭が上手く回ってくれない。この感情に任せて行動してしまいたくなる。冷静でいられない
「……!シノノメッ!!虚から離れろっ!!」
「ッ!!」
二人が飛び退いて僕から距離を取る。二人が居た所には魔法の斬撃痕が深々と残っていた……僕が放った魔法の痕が
「……何、なの……何なんだよもう…ッ…!」
思ったままを吐露してしまう。この感情に任せて
口から出る言葉が大きい。声の粒が大きくなってる。何でなの?この感情は…
………ああ、そうだ。黒髪の人が僕に遣られた時に見せたのと一緒だ。僕の事を睨み付けてその感情のままに言葉を口にしていたあの時と
「何で僕は…ッ!何で僕はこんなに出来損ないなの…!!?」
感情のままに言葉を口にして漸く識る事が出来た。この感情が何なのかを
当たり前が分からない。識らない。理解出来ない。人と違う。同じじゃない。普通じゃない。異なっている。劣っている。
僕は……僕は今自分自身に〝怒って〟いる。何も分からない自分に、識らない自分に。言いようのない怒りが込み上げているんだ
苛々する。何も識らない自分に
むしゃくしゃする。理解が出来ない自分に
壊してしまいたくなる。全部、全部。
もう良いや。どうなっても良い。僕がどうなろうとどうでも良い。沢山欠けているこんな僕なんてどうでも良い。要らない。必要無い。
竜王サマも、おじさんも、僕も。何もかもどうでも良いや
全部、壊れちゃえば良い。そうすれば僕は皆と一緒だ。同じでいられる




