五
ああ、凄いな。竜王サマってこんなに…こんなに強かったんだ
動きが捉えられない。目で追えない。防御が、回避が間に合わない
壁に叩き付けられて、竜王サマの拳を受ける度に僕の覆った魔法壁が壊されて行く。ただそれを受け入れる事しか出来ない
何度かそれを繰り返して……竜王サマの拳が僕の魔法壁を完全に破壊した。罅割れた魔法壁が一気に破裂して霧散してしまった
それと殆ど同時に僕が感じた……お腹への物凄い衝撃。吹き飛ばされながら感じた確かな……強い強い、感じた事の無い痛み
壁に激突する。頭を打った、背中を打った。
……痛い。凄く、凄く痛い。お腹が、背中が、頭が
…立てない。立ち上がれない、起き上がれない
お腹から胸に何かが迫り上がって来る。止められない〝気持ち悪い〟感覚
床にそれを吐き出してしまった。水音を立てながら床に広がる…これは……僕の血…?
……駄目だ。治さなくちゃいけない。分かる、識らないけど分かる。僕の中の本能が告げている、このままじゃいけないって言ってる
「驚いたな、治癒魔法まで使えるか。それもこの前シノノメが使ったのを見て識ったのか」
「………………」
僕の様子を見ながら竜王サマは一歩ずつ……ゆっくりと近付いて来る
もう一度魔法壁を創らないと。もう今受けた痛みは感じたくない、嫌だ。感じたくない、受けたくない
守らないと。もっと硬く強くしないと。またあの痛みを感じる事になる
「また同じ事を繰り返すつもりかい?」
冷たい瞳を僕に向けてそう静かに言って……竜王サマは拳を引き絞る。大丈夫、一回なら耐えられる。受けたら直せば良いんだ、直ぐに直したらずっと耐えられる
ずっと……
耐え…られる……?
……無理だ。魔力は無限じゃない、僕に有る魔力はいつか枯渇する。そうなったらもう耐えられない
竜王サマが拳を振るう。大きく引き絞り放つ一撃…僕が新たに創った魔法壁を一回で壊すつもりなんだ
「…………シノノメ…」
「やり過ぎだヴェルファウド。今のこの子の様子を見て分からないのか」
……その一撃が当たる事は無かった。竜王サマの前に…僕の前におじさんが立って、その一撃を大剣で防いでくれた。受けたおじさんの足場は大きく凹んで罅割れて…途轍も無い威力だった事を思い知らされる
……どうして…?竜王サマもおじさんも……どうして自分達に向かって来た相手を護ろうとするの?自分が傷付く事すら厭わないで…




